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第528話
学校が終わり、着替えが入ってる荷物を持って敷地を区切る門まで出ると高良先輩が待っていた。
「ねえ先輩、どこかでお菓子買っていきたい。お泊まりさせてもらうから、手土産を······」
「旭陽にさっき電話してたんだけど、多分千紘ちゃんは気を使ってそう言うだろうから止めろって言われたんだ。」
「え、でもそれは······」
「大丈夫だって。ほら行こう」
高良先輩が俺の荷物を取って持つ。慌てて手を伸ばした。
「持てる!自分で持つ!」
「いいからいいから」
結局荷物は先輩が持って、交通費すら払わせてもらえずに旭陽先輩の家に着いた。
「千紘!」
「旭陽先輩!」
お家に上がらせてもらうとすぐに旭陽先輩がやって来た。
前に先輩が言っていたように、確かにお腹が大きくなっている。
「お腹大きくなってる!」
「うん。触る?」
「触りたい!あ······でも待って、今手が冷たいからすぐ温めます!」
赤ちゃんがビックリしちゃいけない。
先に手を洗うことにして、それから急いで手を温めた。
「さ、触ります!」
「うん、どーぞ。」
恐る恐るお腹に触れる。
触れた途端に優しい気持ちになれた。
幸せをおすそ分けしてもらったみたいだ。
「動きますか?」
「うん。活発なってきたかな」
「もうすぐ生まれる?」
「まだまだやで」
旭陽先輩は笑っていて、俺達を見ていた高良先輩も優しく微笑んでる。
「急に泊まりに来るって言うからびっくりした。悠介に聞いたら会長さんとなんかあったって」
「······あのね」
宮間さんのことを話すと、旭陽先輩の表情があからさまに歪んだ。
それからギュッと強く抱きしめられる。
「千紘と会長さんはただの番やなくて、運命の番なんやろ。それやったらもっと辛いに決まってる。運命の番が他のオメガに取られるかもしらんっていう不安は俺にはわからんけど、ただでさえ俺は悠介が取られそうになったら辛くて仕方ないのに。」
「でも、高梨先輩が言ってた。偉成は家の事があるから宮間さんに対して蔑ろにはできないって。」
「そんなもん知るか」
体を離すと旭陽先輩は何かを決意したような表情で俺を見る。
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