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第529話

肩を掴む旭陽先輩。 力が強くて少し痛い。 「先輩?」 「俺がその宮間ってやつをどうにかする」 「旭陽さーん?貴方今お腹に赤ちゃんいますよね?それなのにどうにかするってどういうことかな?それは俺が許しませんけど」 高良先輩が旭陽先輩に詰め寄る。 「でも千紘が」 「でもじゃない。旭陽は大人しくしてる。俺がどうにかするから」 「······らしいから、千紘は安心していいよ。悠介はできひんことをできるって言うたりしやんから。」 安心って······2人にそんな事させるのは申し訳ない。 「申し訳ないです。だから大丈夫。自分達で解決します。ここに来たのは旭陽先輩に会いたかったからだし。」 「え、そうなん?俺は悠介から千紘が会長を見たくないからって聞いててんけど······」 「あ、言っちゃダメだよ旭陽」 「あかんかったん?ほんなら先に言うといて」 ちょっと落ち込んでしまう。 偉成を見たくないんじゃなくて、宮間さんと一緒にいる偉成の姿を視界に入れたくないだけ。 多分、高梨先輩に言われた通り俺は子供なんだと思う。 そういう偉成の姿を見ちゃったら、理由も聞かずに怒ってしまうだろうから。 「先輩、大人になるにはどうしたらいいの?」 「千紘は大人になりたいん?何で?」 もっと冷静に物事を見れるようになりたい。 「大人は何かあってもまずは理由を聞いて、頭ごなしに怒ったりしないでしょ?」 「それは······その状況によると思うけど。俺やって悠介がもし他のオメガと手繋いどったりしたらどつき回すと思う」 高良先輩の頬が引き攣る。 どつき回す······知ってはいるけど馴染みのない言葉だ。 「番になるってことは、生涯を共にするって事やろ。お互い愛し合ったからそうなったわけで、それやのに他のオメガにうつつを抜かすなんて苛立つに決まってる。他のオメガと手を繋いだり腕組んだり、それに対しての理由は要らんねん。理由聞いたところで納得いかんしな。」 「そういうものですか?」 「うん。やから俺は理由聞かんと怒っちゃうと思う。俺も子供やからなぁ。」 「先輩は子供じゃないです。ちゃんと考えてそうなんだから」 そう言うと旭陽先輩も、話を聞いていた高良先輩もキョトンとして、それからくすくすと笑う。 「千紘もそうやと思うよ。ほんまはいっぱい考えてんねやろ?やから朝は会長さんを怒ることなく悠介に話したんと違う?」 「考えたっていうか、2人を見たくなくて······」 「まあ何にしろ、千紘も頭ごなしに怒ったりしやんやん。俺より大人なんとちゃう?」 旭陽先輩の優しい言葉にちょっとだけ気分が明るくなった。

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