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第533話

意味がわからないから追い出そうとして立ち上がった時、本当に足を絡ませてしまい倒れ込んだ所、「ただいま」という千紘の声が聞こえてきた。 その瞬間、腹辺りに重みを感じて、顔を上げると宮間に馬乗りになられていた。 たったそれだけ。 「千紘に説明できないし、まず自分も理解できないからどうすればいいのかわからない。なんとかして誤解を解こうと思っていたら朝お前が来て俺に付きまとうから······」 「うん。俺のシナリオ通り」 「巫山戯るなよ」 胸倉を掴めば「降参!」と潔く両手を挙げる。 「でも千紘君もわかってるでしょ。偉成君が仕方なく俺に付き合ってるって」 「そうだろうな。そうじゃないと俺は今頃監禁されてるはずだ。······それはそれで嬉しいけど。」 「偉成君の性癖も変わってるね!」 にこにこ笑う宮間に腹が立つ。 俺はこんなにもピンチに思っているのに。 「いいから、明日千紘が帰ってきたら謝るぞ。許してもらえるまでな」 「えー、もうちょっと仲を拗らせたいのにー」 ブーブー文句を言っていた宮間が、突然体の動きを止めて膝から崩れるように床に倒れ込んた。 「宮間!?どうした!」 「ぅ······ぁ、や、やば、い······っ」 肩に触れると宮間は体を震わせて顔を真っ赤に染めた。 「お、前······発情期か!?」 「はぁっ、あ······く、薬、抑制剤っ」 急いで宮間のバッグから抑制剤を取りだし、腹辺りに刺した。 「あぁっ!」 宮間の股間部分が濡れて、うっとりした表情で俺を見上げた。 「うぅ······っ、た、たすけ、て······」 「び、病院行くか?」 「やだぁ······」 そうこう話しているうちに、廊下がバタバタと騒がしくなり始めた。 きっとまだ学校に残っていたアルファとベータが宮間のフェロモンの匂いに影響されているんだ。 俺には番がいるからなんの影響もない。 急いで空き教室の鍵を閉めた。 「ひぃっ、ひ······っ」 「大丈夫、もう薬は打ったからもうすぐ効くはずだ。」 「ぁ、つらい、はぁ、はぁっ」 今は宮間の傍にいて、他の人間に襲われないように守ってやることしかできない。 「水飲むか?」 「っ、いらないぃっ」 「好きな相手はいないのか、気になってるやつとか······。そいつに触ってもらえばマシになるんじゃないか?」 そう話をしていると匡から電話が掛かってきた。 すぐに出ると「兄貴!今どこだ!」と匡の焦り気味の声が聞こえた。

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