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第543話
次の日、朝食を食べ終わりテレビを観ていた。
9時頃にお医者さんが来て、診察が終えると予定通り退院していいことになった。
もともと持ってきていた荷物は殆どなくて、すぐに荷物を纏め終わり、その頃には偉成がやって来て、俺を強く抱きしめる。
「痛い痛い!」
「ぁ、すまない!」
体が離され、少し苦しかった呼吸が落ち着く。
偉成が俺の荷物を持ってお金を払いに行くから、俺は総合受付の椅子に座って待っていた。
暫くして戻ってきた偉成に手を取られる。
指先にチリッとした痛みが走って眉を顰める。
偉成もそれを感じたようで、困ったように笑う。
「今日も本当は発情してるのを薬で抑えてるって帰り際看護師さんに聞いた。」
「······じゃあそろそろ効果切れるかもしれないの?」
「今の感じだとそうなのかもしれない。早く帰ろう」
腰に手が回され、病院の前まで行くとタクシーで寮まで移動した。
寮に帰り、偉成が荷物を置いて俺をソファーまで誘導する。
「まずは説明したい。話を聞いてくれるか?」
「うん、でも······発情が始まるまでね。」
それから俺は不思議なことを聞いた。
宮間さんは偉成を俺から奪おうとしていたわけじゃないこと。
嫉妬して怒る俺がどうやって偉成に言いよって、最後はどうして仲直りするのかを見たがっていたこと。
「その話をしている途中に宮間が発情期を起こしたんだ。」
「え······」
勿論、偉成には俺という番がいるから他のオメガのフェロモンには影響されない。
その時に学校にいた番がいないアルファとベータから宮間さんを守るために部屋の鍵を閉めて、抑制剤で宮間さんが落ち着くまでそこに居たと。
抑制剤を打つ時に宮間さんの服が汚れてしまったから、匡に体操着を持ってきてもらい、それに着替えさせて寮まで運んであげた。けれど翌朝にプリントが体操着のポケットに入ったままだったことを思い出して取りに行ったと。
「それが全てだ」
「······ただの俺の勘違い?」
「千紘じゃなくて、俺と宮間を見ていた生徒のだな。噂が一人歩きしておかしな方向にまで行ってしまった。」
全てを聞いて体の力が抜けた。
途端にブワッと熱が上がり、偉成の胸に倒れ込む。
「あつ、い······」
「っ!」
偉成に抱っこされて、ベッドに運ばれる。
発情が始まって、熱くて服を脱いだ。
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