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第548話

結局その後、千紘が発情を起こすことは無かった。 予定していた通り、昼はゴロゴロと過ごす。 千紘が甘えてきてくれるのが嬉しくてニヤけたりして。 「クリームシチューが食べたいな」 洗濯物を畳む俺の背中に背中を合わせて、音に乗せてそう言った千紘。 今の、すごく可愛かった。もう1度歌ってほしい。 「クリームシチューか。少し寒くなってきたしそうするか。」 けれどリクエストをするのは我慢して、今日の晩御飯はシチューを作ることに決めた。 「材料ある?」 「無いから買いに行ってくるよ。」 「俺も行く!」 「体は辛くないか?千紘は家でゆっくり休んでいてほしい。」 つまらなそうな顔が俺を見る。 それからムッとして、勢いよく飛びついてきたかと思うと、床に押し倒された。 「行くったら行くの!」 「わ、わかった!」 馬乗りになって俺の手をそれぞれ床に押しつける。 すぐに解ける弱い力なのに、その気にならない。 それどころかこういうのもアリだと思う。 「千紘」 「······あ、何も言わないで。偉成が言いたいことが何となくわかった気がする。すぐに降りるから何も無かったことにして。」 俺の気持ちを察したのか、匂いで興奮しているとわかったのか、千紘が上から降りてしまった。 「偉成はちょっとMなところがあるよね」 「千紘限定でな」 「でも俺は攻めるより攻められたいよ?」 「······よし。全力で攻めようか」 そんなふざけた会話をしあって、その後買い物に行き、夜は温かいシチューを食べた。

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