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第549話

千紘との関係も完全に修復できた頃。 学校に行こうと寮を出ると、久しぶりに見る宮間が居た。 千紘は体を強ばらせたけど、すぐにそれも無くなって、けれど俺の手をぎゅっと握る。 発情期はとっくに終わっていたはずなのに、姿が見えなかったから少し心配していた。 「偉成君、いろいろとご迷惑をおかけしました。」 そして俺に向かって頭を下げた宮間に、思わず溜息が漏れる。 「俺じゃなくて、千紘に。」 「······松舞さん、あの······ごめんなさい。」 千紘はもう全てを知っているから、怒ることもなければ、悲しむことも無い。 「良いけど······。偉成と俺が喧嘩して仲直りするところが見たいなら、普段から言い合ったりするし、いつでも見れるよ。」 「じゃあ俺、ずっと2人のこと見てますね!」 「······そういう事じゃないんだけどな。」 自然と3人で登校することになって、千紘は宮間とずっと話をしている。 いつの間にか2人は仲良くなって、俺をそっちのけでキャピキャピとはしゃいでいた。 千紘を送り、宮間と別れて自分の教室まで行くと既に高良が来ていて「おはよ」と手を振ってくる。 「おはよう」 「今日はちょっと寒いね」 「そうだな。もう冬になるな」 ぼんやりと窓の外を眺める。 そろそろ千紘は朝起きるのを嫌がる時期だ。 毎朝布団を剥いで「顔を洗ってリビングに」って言っても、気が付けばまた布団を被って深い眠りに就いている。 そんな朝が始まりそうで、少し困る。 「ねえねえ会長、この課題見せてっ」 笑顔で俺にプリントを見せてくる高良。 一体これで何度目だ。 「またやってないのか」 「できなかったんだよねー。難しくてさ」 いつも何かと世話になっているから、半ば仕方なくプリントを渡す。 それを一生懸命写して、朝のホームルームが始まる頃には「間に合ったよ」とプリントを返してきた。 「今日も1日頑張ろうね」 高良は明るくそう言って前を向く。 そしてそのまま、机に顔を伏せて眠り出した。

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