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第551話
タクシーが着いた先は墓地。
もう暗くなったそこ。明るくないこの場所は少し不気味にすら感じる。
「誉」
暗がりを探し回ると、漸く道に座りこんで膝に額をつけて隠れている誉を見つけた。
名前を呼んで肩に触れると、大袈裟なくらい肩を跳ねさせ、顔を上げる。
「お前を探す時にここら辺を見て回った。誰もいなかったから安心しろ。」
「······悪い」
「寒かっただろ。何か温かい飲み物買ってくる。何が言い?」
「ココア」
持ってきていたマフラーを誉の首にかけて、一緒にベンチまで移動し、飲み物を買って戻る。
誉は意外と甘党で、指定されたココアを渡せば、それを両手で握って温かさに表情を緩ませる。
「お前の家に帰るか。」
「······松舞は」
「千紘には伝えてある。」
俺が立っても座ったまま動こうとしない誉の手を取り、ぐいっと引っ張ると抵抗することなく立ち上がる。
「一緒にいるから、我慢しなくていい。怒りたいならそうすればいいし、泣きたいなら泣け。お前ばかりが背負わなくていい。」
手を掴んだまま、来た道を帰る。
ゆっくりと俺の後ろをついて歩く誉は、そのうちズズっと鼻を啜り出した。
とぼとぼと歩き、またタクシーに乗って誉の家まで帰る。
誉の家に帰ると、使用人達が迎え入れてくれた。両親はまだ仕事で帰ってきていないらしい。
俯いて目元と鼻を赤くしてる誉を見た使用人達は何も言わず、誉の部屋に通してくれた。
「誉、風呂に入って温まってこい。」
「······これ、冷たくなっちまった。」
手に握ったままのココア。
それを受け取ってテーブルに置く。
「これは温め直しておくよ。」
「······マフラー汚れたかも」
「いいよ」
誉の体が冷えきっている。早く温まらないと風邪を引いてしまう。
クローゼットから適当に着替えを取り出して、それを誉に押し付けた。
「話は後でいくらでも聞く。」
「ありがとう」
覇気のない弱々しい声。
フラフラと風呂に入りに行った誉を見てから、ココアを持って使用人に声を掛け、温めてもらうように頼んだ。
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