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第553話
その年の夏休み、真緒と俺は夏祭りに出かけた。
正直、既に真緒に恋をしていると自覚した上で2人で祭りに出かけるから、俺は勝手にデートだと思い込んで緊張していた。
「誉君!綿飴食べたい!」
「うん、買いに行こう。」
一緒に人混みの中を歩く。
「真緒」
「ん?何?」
「······手、繋がないか。」
思い切ってそう言ってみる。
ドキドキして、本当に口から心臓が出そうだ。
「え······」
「っ!ち、違う!お前は小さいから人に流されるかもしれないだろ!迷子になったら困るから!」
咄嗟に言い訳をする。
けれど真緒からの返事はなくて、恥ずかしくて見れていなかった真緒の顔を見ると真っ赤に染っていた。
「あ、そ、そうだよね······小さいもんね、うん。確かに······じゃあ、迷子にならないように繋いでて、ほしいな······?」
差し出された俺より小さい手。
その手を掴むと、ギュッと握られて可愛さと緊張で、また顔を見れなくなった。
そろそろ花火が打ち上がる時間。
食べ物を持ったまま、人の少ない公園に移動してベンチに座る。
すると大きな音を立てて花火が夜空に現れた。
2人でそれを眺める。
「綺麗だね」
「うん」
楽しそうに花火を見る横顔を眺めて、ああ、好きだなと思う。
ふいに真緒が俺を見て、視線が絡んだ。
「真緒」
「何?」
夏の暑さか、祭りで昂っているのか、いつもなら絶対に口に出来ないはずの想いがいとも簡単に飛び出す。
「好きだ」
相変わらず辺りには花火の大きな音が響いている。
真緒は口をパクパクと開閉させて、そのうち顔を逸らして俯いた。
ちらっと見える首輪。
それがあるということは、俺は真緒と番になることだってできる。
「真緒は、俺のこと嫌い?」
「······嫌い、じゃない」
許されるなら、真緒の全てが欲しい。
これはきっとアルファの本能。
好きなオメガを自分のものにしたいと体が欲してる。
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