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第554話
「じゃあ、好き?」
「······誉君はずるい」
急にそう言い出した真緒に首を傾げる。
ずるいって、何がだろう。
その先の言葉を待っていると、真緒はぽつぽつと呟き出す。
「誉君はいつも格好いい。優しいし、守ってくれる。そんな誉君を嫌いなわけがないし······好きじゃないわけないじゃん。」
真緒がゆっくりとまた俺を見て、今度はふんわりと恥ずかしそうに笑った。
「好きだよ。大好き」
思わず真緒に手を伸ばし、そっと唇を合わせた。
それは今まで生きてきた中で、1番嬉しい出来事だった。
***
「へえ、じゃあその真緒ってオメガと付き合ったんだな。」
「ああ」
俺の部屋でアイスコーヒーを飲む幼馴染の偉成。
カラコロと氷の音が鳴る。
俺は偉成に真緒とのことを話していた。
「じゃあ番になるのか」
「······なりたい。真緒が望んでくれるなら、俺は今すぐにでも真緒の項を噛みたい。」
「冷静に考えて発情期じゃない時に噛んでも痛いだけだけどな。」
「わかってるよ」
ジト目で偉成を見ると、何を考えているのか全くわからない無表情で俺を見ている。
そんな中、ドアがノックされて使用人が入ってきた。
「真緒さんがいらっしゃってます。」
思わず立ち上がる。
偉成は「俺も会いたい」と言って、一緒に玄関まで迎えに行った。
「真緒」
「誉君!」
俺を見ると笑顔で手を振ってくる。
それが可愛くて仕方がない。
「誉君、その人は?」
後ろについてきた偉成を見て、真緒は首を傾げた。
「俺の幼馴染の偉成」
「あ、偉成君、初めまして。真緒です」
「ああ。誉から聞いた。誉と付き合ってるんだってな。変な奴だったらやめておけと言おうと思ってたけど、礼儀正しいし可愛いな。」
偉成は思ってる事を全て言ってしまう性格だから、その言葉を聞いて真緒は苦笑している。
「真緒、何かあった?家に来るなんて珍しい。」
「あ······えっと、会いたくなっちゃって······」
胸が撃たれたような衝撃。
思わず胸を押さえると偉成が鼻で笑う。
「誉君······?」
「安心しろ。誉はお前が思っているより単純で馬鹿だからな。今もきっとお前の会いたかった発言を喜んでるだけだ。」
偉成に単純で馬鹿と貶されたことより、真緒の言葉が嬉しくてニヤニヤしてしまう。
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