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第558話
翌日、予定通り真緒を迎えに行こうと連絡を入れた。
家を出ようとした時、ポケットに入れていたスマートフォンが震えて画面を見ると真緒からの電話で「もしもし」といつも通りに出る。
「······高梨誉君間違いないでしょうか。私は真緒の母親です。」
真緒の母親。
その人がどうして真緒の携帯で俺に電話をかけてきたんだろう。
「はい。初めまして。高梨誉です。」
不思議に思いながら挨拶をする。
すると震える声で「真緒の体調が悪くて」と伝えられた。
「体調が?風邪ですか?」
「あ、の······そ、そうです。」
「······わかりました。お大事にって伝えてください。」
違和感を覚えながら電話を切る。
今日は日曜日。
1日休めば元気になるだろうか。
もし月曜日、学校に来れなかったら様子を見に行こう。プリントも配られるだろうし。
折角昨日約束したのに残念だな。
急に寒くなったから、体調崩しちゃったんだろうな。
そんな事を思いながら、俺は部屋に戻って部屋着に着替えた。
***
月曜日、結局真緒は学校に来なかった。
先生にプリントを預かって真緒の家に向かう。
やっぱり今日も寒い。マフラーを巻いていて正解だった。
そう思いながら道を歩いていると、向こうから車椅子を押す人と、項垂れるように力無くその車椅子に座る人が見えた。
距離が近づく度に嫌な予感がする。
そして遂に目の前に立った時、体の熱が一気に無くなった。
「ま、お······?」
車椅子に座っていたのは真緒だった。
でも、まるで別人のようだ。
表情をなくして、顔色も酷く悪い。
車椅子を押していた女性は目を見開き固まっている。
「な、何が······え、あの······真緒のお母さんですか······?」
「······高梨、誉君······?」
お母さんが俺の名前を呟くと、真緒は目からポロポロと涙を流し出した。
慌てて震える手で真緒の頬に触れる。
なかなか合わない目を、無理矢理合わせると真緒は唇を震わせる。
「何があった······っ」
俺を見る度に可愛い笑顔を見せてくれた真緒が、ここにはいない。
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