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第567話
「おはようございます」と声が聞こえて目を覚ました。
いつの間にか誉の手を握ったまま眠ってしまっていたらしい。
誉はまだ眠っていて、疲れているんだなと思いながら欠伸を零す。
「朝食の準備が出来ましたがこちらで召し上がられますか?」
「······そうします。」
眠る誉の肩をトントンと叩く。
嫌そうに眉間に皺を寄せたけれど、ゆっくりと目を開けてぼんやり宙を見ている。
そんな誉に「朝御飯」とだけ言うと、すぐに上体を起こした。
「······今何時だ」
そしてそう聞いてくる。
「えっと······8時だな」
「遅刻じゃないか。何でもっと早く起こさないんだ。」
キッと俺を睨んでくるけど、俺だって今起きたばかりなんだ。仕方がない。
「まあ、たまの寝坊くらいいいだろ。」
「······寝坊してしまったんだからどうにもならないか。」
怒っても無駄だと思ったのか、ベッドから下りると顔を洗いに洗面所に行った。
俺は風呂を借りることにして、サッパリしてから朝食をいただく。
ゆっくりとオムレツとベーコンを食べていると誉がまた睨んでくる。
「優雅に食べてるけど遅刻だからな。それにここに制服もないから1度寮に戻らないと」
「別に、今日くらいいいだろ。遅刻がダメなら休む。」
「馬鹿か。お前は受験だってあるんだろ。マイナスになるようなことは成る可くするな。」
頷いて返事をし、食後の珈琲を飲んで立ち上がる。
同時に誉も立ち上がった。
「早く行かないとお前の運命の番が寂しいって泣いてるぞ」
「ああ、それは大変だ。早く抱き締めてやらないと。」
歯磨きをして、誉の両親に挨拶をしてから学校に向かう。
時間は8時45分。
どう考えても間に合わない。
「偉成!もっと速く走れるだろ!」
「ま、待て、食べたばかりだぞ、横腹が痛いっ!」
それなのに走れという誉は、完全にいつも通りで、ちょっとバカにしたような顔で横腹を押さえる俺を見ていた。
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