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第585話 誉side
***
学校が終わり、寮に1度戻って服を着替える。
荷物を持って部屋を出ると、丁度偉成が帰ってきたところだった。
「もう行くのか?」
声を掛けてきた偉成に頷いて返事をする。
「気をつけて行ってこいよ。しつこいようだけど、何かあれば連絡」
「わかってる」
偉成と別れ、寮を出る。
最寄りの駅まで歩き、電車に乗って移動する。
いつも真緒に会いに行く時、ガタガタと揺られるこの時間は何も考えられない。
楽しかった事も、苦しくて、辛かった事も、全て思い出して最終的には無になる。
そしていつの間にか目的の駅に着いて、慌てて降りるのが決まりのようになっていた。
駅で花を買ってから、何度も通った道を歩き、迷うことなく着いたそこ。
この前は墓前に行く事も叶わなかった。今日はちゃんと話が出来る。
真緒の墓の前で線香に火を灯す。
手を合わせると胸の中にある切ない気持ちが溢れ出した。
「······会いたい」
会いたくてたまらない。
もしあの日に戻れるなら、俺は真緒をどこへでも連れ出して、辛い思いをすることなく生きられるようにしてやりたい。
最後まで、守りたい。
「真緒······会いたいよ。」
こんなこと言ったって真緒が困るだけだ。
わかっているけど、止まらない。
自然と頬を伝って流れる涙。
ポタっと地面に落ちる。
急いで袖で涙を拭った。
「ーー変わった奴と会ったんだ」
寂しい思いを隠すように、泰介の事を伝えていく。
何故か、俺に付きまとうんだ。
番にはならないってわかってるくせに、離れようとしないから、俺も無下にできないって。
「ああ······もう、帰らないと。」
気がつけば空は暗くなってきていた。
真緒に「またな」と伝えて腰を上げる。
来た道を戻り、行きよりかは心が軽くなったと感じ、またしばらく電車に揺られて漸く学校の最寄り駅に着いた。
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