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第588話
「あー、高梨先輩が後輩を怖がらせていじめてるー!」
そんな聞き慣れた声が聞こえて、苛立ちながら松舞を見る。丁度生徒会から帰ってきたのか、まだ制服のままだ。
「何かあったんだろうけど、怖がらせたって意味ないと思う。」
「······うるさい」
「その、圧力掛けてくるのやめてください」
ハッキリと言われ、確かに松舞には関係ないことだったと思い深呼吸をして気を鎮める。
「俺の偉成、良かったら1晩貸し出ししますよ。」
「······1晩は要らない」
「あ、そう?今頃ご飯作って待っててくれてます。早く帰らないと。先輩も一緒に帰ります?」
「お前······図太くなったな。」
「褒め言葉として受け取りました!」
松舞に腕を掴まれ、弱い力で引っ張られる。
オメガだと普通に掴んでもこんなに弱いのか。それならきっと、泰介の腕を掴んだ時泰介は痛い思いをしたはずだ。······いや、そういえば痛いって言っていたな。
「ただいまー!」
「千紘!おかえり!ああ今日も可愛い!疲れただろ。俺が癒してやるからな。まずはどうする?風呂か?それともやっぱりご飯か?その前に俺とイチャイチャするか?」
狂気的な番を見てもケロッとしてる松舞だが、俺は正直引いている。
「誉もいるじゃないか。よーし、誉のご飯も用意するからな。いっぱい食べていけ!」
「偉成は食べ終わったら先輩と一緒に先輩の部屋に行ってね。俺はやりたい事あるから」
「······え、もしかして遠回しに俺が邪魔だと言ったか······?」
ピシッと固まった偉成を見て、松舞は「面倒臭い」と言って靴を脱ぎ、廊下を進んでいく。
「偉成、俺の飯はいい。後で少しだけ話がしたい。」
「なるほど。千紘は俺と誉が話せるようにああ言ったのか。······なんて優しいんだ。」
さっきの様子とは一転して嬉しそうな表情をする幼馴染は、俺の話を聞いていなかったようで、俺の背中を押してリビングに歩いて行く。
「おい、俺はいいってば」
「今日は千紘が好きな物オンパレードだけど、それがまた上出来なんだ。たんと食え」
「話を聞けよ」
偉成の中ではもう俺がここで飯を食うことは決まりらしい。
部屋に戻っても特に何も無いし、寮食も食べ飽きてるから悪いことは何もない。それなら別にいいか。そう思って大人しく席に座った。
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