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第589話

食事を終えると、松舞に促されて偉成と俺の部屋に帰った。 ソファーに座り、今日あったことを話せば怪訝な顔をされる。 「お前、ろくに話も聞かずに脅したのか。」 「それに関しては悪いと思ってる」 「いや、思ってないな。思ってたらそんなに気が立ってない」 確かに、悪いとは思ったけど納得はしてない。 見透かされているのが気に食わない。 「まあでも、仕方ないな。誉が唯一怒ることは真緒に関することだ。俺はそれをわかってるから別にお前を責める気はないよ。」 「······真子と泰介は何を企んでると思う」 考えても、思い付かない。 今更真子が泰介を使って俺に近付く理由が。 「何も企んでないかもしれないぞ」 「······それは無いだろ」 何の根拠があってそう言えるのか。 睨みつけると口元だけ笑った偉成が俺を指さす。 「根拠は無い。ただお前は囚われすぎだと思う。少しくらい渡自身を見てやれ。」 「今まではそうしてた。」 「これからもだ。もし本当に何も企んでなかったら?ただ純粋にお前と一緒にいたいだけなのに、疑われ続けるなんか辛いに決まってる。」 「疑われるようなことをする方が悪い」 「お前の過去を知らないなら仕方がないだろ」 深く息を吐く。 偉成は大抵、正しいことを言う。 これもそうなのかもしれない。 「······これからも、泰介自身を見るようにする。」 「ああ、そうしろ。」 満足そうな偉成を睨みつけ、それでも泰介に会ったら嫌な態度を取ってしまいそうだと不安になる。 「向こうも脅えてるだろうから、優しくしてやるんだぞ。」 「······わかってる」 わかっていても、それができるとは限らないけど。

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