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第592話 偉成side
昨日の夜、千紘とイチャイチャしまくったおかげで寝坊し、遅刻は確定。
授業の途中で教室に入るのは嫌だという千紘と一緒に生徒会室で1限目をサボることにした。
生徒会室に入ると鼻をすする音が聞こえ、それと一緒に渡が床で座りながら泣いているのが見えた。
きっと誉と話をしていたんだな。ここに居るということは今現在生徒会役員をやっている奴か、元生徒会役員に案内されたと考えるのが1番だ。
千紘はすぐに渡の傍に行き背中を撫でてやっている。
襟首がぐちゃぐちゃになっている。
もしかすると誉に胸倉を掴まれて、苦しい思いをしたのかもしれない。
「渡君、とりあえずソファーに座らない?ここじゃ汚れちゃうよ」
「う······っ、先輩······」
「どうしたの。ほらほら、こっちに移動して」
優しく声を掛ける千紘。
そのまま渡を運んでやろうとしているけれど、力の抜けてる男を運ぶのは難しいらしい。俺が代わりにそっと抱き上げてソファーに座らせてやると、千紘にキラキラした目で見られ「格好良い」と言われて大満足する。
······いやいや、そうじゃなくて。
「誉と話をしてたんだろ。何かキツいことでも言われたか?」
「っ、金輪際、近付くなって」
ああ、悪い方向に行ってしまったのか。
とにかく慰めている千紘は、カバンからハンカチを取り出して、優しく濡れた頬を拭ってやっていた。
「何か怒らすようなことを言ってしまったか?例えば······真緒のこと。」
そう言うとあからさまにビクッと肩を揺らした渡。どうやら図星らしい。
「千紘、悪いけどそこの部屋に行っておいてくれないか?この話は聞かせられない。」
「······わかった」
納得していない様子だけど、仮眠室に移動してくれる。
渡と俺のふたりきりになった部屋は、やけに静かだ。
「真子と会ってたんだってな」
「······赤目先輩も知ってるんですね、真子さんと真緒さんのこと。」
頷いて返事をする。
渡は目元を赤く腫らして、俯いた。
「誉先輩がいつまでも前に進まないなんてこと、真緒さんは望んでないって言いました。」
「······はぁ」
思わず溜息を吐く。
それは、金輪際近付くなって言われても仕方がない。
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