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第594話

「高梨先輩に告白?え、待って、何の話してたの?すごく気になる」 「いや······告白するしないの話はしてない。待て、そもそも今は授業中じゃないか?」 「うん。渡君は行動力の塊だね」 小さく頷く。すると千紘が俺の膝に座って至近距離で顔を合わせる。 「じゃあ、とりあえず俺達は休み時間までイチャイチャしておく?」 ちゅ、とキスをされて千紘が柔らかく微笑む。 「······渡が気になる」 「それはわかる。でも気にしたところで俺達は部外者じゃん?」 「それもそうだな」 千紘の後頭部に手を回して引き寄せる。 キスをして舌を絡め、顔を赤くする千紘が可愛い。 「ん、ふ······偉成、腰撫でて」 「まだ痛い?」 「ちょっと······違和感が」 そっと千紘の腰を撫でながら、キスを繰り返す。 唇が離れ、息を切らした千紘は俺の肩に頬を付けて深く息を吐いた。 「まだ時間あるね」 ポツリと千紘が呟く。 少し眠たそうな声音。昨日はあまり眠れなかったから、きっと眠気がやってきたんだろう。 「ちょっと寝ておくか?」 「イチャイチャできないけど」 「いいよ。千紘に触れてるだけで幸せだから」 そう言って背中を撫でていると、次第に穏やかな呼吸音が聞こえたきた。 ああ、可愛い。 俺の腕の中で、こうやって眠ってくれるなんて。 けれどやっぱり、渡と誉が気になる。 今度こそいい方向に向かってくれ。 真緒も、誉のことを思って同じように考えていてくれと、密かに祈った。

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