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第595話 泰介side

授業中だってこと忘れてたけど、そんなの気にしてられない。 誉先輩の教室を覗いてみるけどそこにいなくて、学校内を必死に探した。 中庭まで走って行くと、明るかった空が曇りがかっていた。 「っ、誉先輩!!」 見慣れた後ろ姿がベンチに座っている。 傍に寄れば、鋭い目で見られて、嫌な感覚が背中を走った。 「近付くなって言っただろ。」 「······あ、の······俺、伝えたいことが、あって······」 なんだか胸がいっぱいになって目頭が熱くなる。 鼻の奥がツンとして、それを堪えるように声を絞り出した。 「誉先輩っ」 「何だよ」 目の前に立って、誉先輩をじっと見る。 次第に誉先輩の目は鋭さを失っていく。 「俺、先輩が······っ、先輩が好きなんです······つ!」 堪えることが出来ずに涙が頬を伝う。 手の甲でそれを拭い、けれど止まることがなくてついにはしゃくりあげる。 「先輩が、真緒さんのことが大切だって、わかってるけど······っ」 「······落ち着けよ」 「好き、好きなんです、本当に······先輩が好き······」 格好悪いけど、止まらないから仕方がない。 こんな感情をぶつけて、誉先輩には迷惑かもしれないけど、それでも俺の気持ちをわかってほしい。 「······わかった。お前の気持ちはちゃんと受け取った。だからもう泣くな」 「だ、ってぇ、近付くなって······っ」 「あー、もう、はいはい。俺が悪かった。」 呆れたようにそう吐き捨てた先輩。 緊張が解けたのか体から力が抜けて地面に膝を着く。 「おい······」 「よかった······っ」 先輩が俺の背中に触れて優しく撫でてくれる。 「こっち座れ。服が汚れるから」 「先輩ぃ······」 「うん、何?」 「俺、先輩が好き······、好きだから、お願いです、嫌いにならないで」 番にしてなんて言わないけど、傍にいることは許してほしい。 「······俺の傍にいたって何にもならない。お前の方こそ俺を早く嫌いになって、他の人を好きになれ。」 胸が痛い。 俺の望みはそれじゃない。

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