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第597話
「先輩は柔軟剤は何を使ってますか。」
「適当に買ったやつだけど。安いぞ」
「······安くてそんなにいい匂いのやつがあるんですか。教えてください。」
そう言うと怪訝な顔をするから、もしかして俺は今すごく気持ち悪いことを言ったんじゃないかと焦ってしまう。
「ごめんなさい、嘘です。気持ち悪いですよね。」
「······いや、柔軟剤の名前が思い出せなくて」
なんだ、すごく安心した。
気持ち悪がられてなかった。
「思い出せないから、帰ったら見てみる。」
「······先輩」
「何」
なんて優しいんだ。
やっぱり俺は先輩が大好きだ。
「連絡先、交換してください。」
「本当だ。まだしてなかったな」
すぐに連絡先を交換してくれて、嬉しさに口角が自然と上がる。
「俺、やっぱり先輩が好きです。」
「わかったよ。もう言わなくていい」
「こんなに誰かを好きになったの、初めてです。」
「······もう言うなってば」
先輩が大きな手で顔を覆った。
ちょっと照れてるみたいで、その顔が見たくて覗き込むと、反対の大きな手に顔を押された。
「見るな」
「嫌だ、見たいです。見せて、誉先輩お願い!」
先輩の手に触れて離してもらおうとすると、そっと手が離れた。
「あー!もう!いつもの誉先輩になってる!格好良い!」
「お前······なんか吹っ切れたな?」
先輩は小さく笑って俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。
そんな時チャイムが鳴って、優しい時間が終わる。
「先輩······」
立ち上がった先輩を見上げる。
行っちゃうのか。寂しいな。
もうちょっとこうして話してたいな。
「話すのは終わり。1限目サボったんだから、次はちゃんと受けろよ。」
そう言われてついつい心の中で『えー』と零す。
「えー、じゃない。ほら、早く行け。」
「はーい。······え?」
「あ?何だよ」
「······いえ」
あれ、俺今声に出してたっけ?
心の中で言ったつもりだったんだけどな。
ちょっと気になりながらも、先輩の言う通りに教室に戻った。
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