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第598話
教室に戻るとやっぱり俺は1人で、席にぽつんと座る。さっきまで誉先輩と一緒にいれた分、余計に寂しい。
「渡」
声を掛けられて顔を上げるとクラスメイトで、話し掛けられたのは初めてでちょっと嬉しかった。
「······何?」
「最近高梨先輩にまとわりついてるだろ。あれ、何してんだ?」
いつの間に見られてたんだろう。
ああ、でも仕方ないか。
場所なんてどこでも構わずに話していた。誉先輩も優しいから、何も言わずに俺に付き合ってくれていたし。
「誉先輩とはお話してるよ」
「話?何の」
「いろんなこと」
一方的に俺が話しかけて、たまに先輩が興味を持ったことに関しては返事をくれる。
「他のクラスに俺の幼馴染がいて、そいつはオメガなんだけど、誉先輩が好きなんだって。紹介してやって」
「······え、嫌だ。」
俺だって誉先輩が好きなのに、わざわざライバルが増えるようなことしたくない。
「は?嫌だって何。」
「それくらい自分ですればいい」
「······お前本当、オメガの中でもクソだな。」
オメガの中でもクソだって······。気付いていないかもしれないけどそれって君の幼馴染の事も酷く言ってるよ。
そんな心の声を抑えて、その子を睨みつける。
「本当に誉先輩が好きなら、それくらい自分でしないと、あの人は振り向いてくれないと思うけど。」
「そのつもりで言ったんじゃねえだろ。お前が高梨先輩を好きなんじゃねえのかよ。だから取られたくなくて紹介しないんだろ。」
「そうだよ」
ハッキリとそう言うと、まさか俺が正直に肯定すると思ってなかったのか驚いた顔をする。
「お前も先輩が好きなのかよ······。あの人の噂は知ってるんだろ?番を作らないって。それなのに何で好きになるわけ?あの人の何がいいんだよ。」
「先輩は優しいから」
「······辛いだけだろ」
首を左右に振って否定した。
そんな事ない。辛いだけならとっくに諦めてる。
「本当に誉先輩は優しいんだ。辛いだけじゃないよ。」
「······本気で先輩の事が好きなのか。アルファだからじゃなくて?」
「うん。誉先輩だから好き」
自然と口角があがる。
先輩のことを考えると、気持ちが明るくなるんだ。
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