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第601話 誉side
抑制剤を打って校門で待っていると、泰介を横抱きにした偉成と松舞がやって来た。
ホッと安心していたのに、偉成に抱かれてる泰介をもう1度視界に写した途端、体が細かく震えだす。
目の前に3人がやって来て、おもむろに泰介に手を伸ばし、頬に触れた。
グッと唇を噛み、皮膚を破って血が流れ出しても気にならない。
なんで、どうして、運命はこんなに残酷なんだろう。
体が言うことを聞かず、偉成と松舞が制止するけれど無理で、泰介の唇に自らのそれを押し付ける。
体中の血液が沸騰してるみたいに体が熱い。
「な、んで······」
泰介が目を見開いてそう呟いて、声を聞くと今までに無いほどの幸福感を心の底から感じて、偉成の腕の中から泰介を奪いたくなる。
「誉!離れろ!」
半ば無理矢理泰介から離されて、泰介はそのままタクシーに乗せられる。
「お前は連れて行けない。俺と千紘が着いていくから、安心してくれ。」
「······泰介」
これは、真緒に対する裏切りになるんじゃないか。
今更······運命の番に出会うなんて。
泰介と出会った時には何も無かった。だから、突然こんなことになるなんて思ってもみなかった。
タクシーが小さくなって消えていく。
それと同時に泰介を奪われたかのような不安に陥って、今すぐに走り出したい。
けれどそれを真緒への罪悪感が止める。
「っ、ど、うしたら······っ」
俺はどうしたらいいんだ。
寮の方に足を向けて歩き出す。
無意識に目から溢れる涙が頬を濡らした。
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