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第614話
運命の番は幻だとか、都市伝説だとか言われることが多いのに、俺たちを含めて2組もこの学園でできているだなんてすごい。
「帰ろう。寒い」
「あ、ごめんね。」
手を引かれて誉君の部屋に戻る。
すぐにお風呂に入るように言われて、急いで風呂場に行き、冷えた体を温めた。
早く誉君に入ってもらわなきゃ。
ずっと外で待っていてくれたし、俺なんかよりもっと冷えてるはずだ。
慌てて脱衣所に出て体をタオルで拭き、服を着てリビングに飛び出す。
「誉君!あがりました!」
テレビを見てた目が俺に移ると、ぐぐっと眉間に皺が寄る。
何がダメなことしたっけ。
今の誉君の匂いを嗅ぐと少しだけ不安になった。
「髪濡れたまま」
「あ······急いであがった!誉君の方が冷えてると思って!」
「そんなのいいから早く乾かせ。」
小さく溜息を吐いた誉君。
俺はちょっと寂しくなりながらも頷いて、首に掛けていたタオルで濡れた髪をガシガシと拭く。
「別に怒ったわけじゃない」
「え······」
「······寂しいんだろ?怒ったわけじゃない。不安させたなら悪かった。」
俺に近づいて、タオルを掴み優しく髪を拭かれる。
うっとりして誉君を見上げると、ちゅっと触れるだけのキスをされた。
「ドライヤー持ってくるからここに座って待ってて」
「うん」
誉君が部屋から消えていく。
俺は今恥ずかしさと嬉しさが爆発して、心の中で「うわ〜〜っ!!」と叫び声を上げている。
誉君が格好よすぎる。
俺にはもったいない人だとわかっているのに、誰にもとられたくないとも思っていて、その鬩ぎ合いがずっと続いている。
「泰介?ここに座って待っててって言ったんだけど」
「あ、ごめんなさい」
ドライヤーを持った誉君が小首を傾げて立っている。
俺はすぐに指定された場所に座って、ピンっと背筋を伸ばした。
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