617 / 876
第617話
いつの間にか意識を失っていたみたいだ。
目を覚ますと、優しい表情で偉成が俺を見ていた。
少し恥ずかしくて、両手で顔を覆って隠す。
「おはよう、千紘」
「······おはよう。そんなに見ないで」
「可愛くて、ついな。」
手を取られて、頬にキスされる。
俺もついつい偉成相手となると甘くなっちゃう。
偉成もそれをわかってて、俺に甘えるようなことを言うからずるい。
「千紘、もっとキスしたいからこっち向いて。」
「······もう」
そんなお願いされて聞かないわけがない。
体ごと顔を偉成の方に向けると、激しく求められるようなキスをされた。
ちょっと息が苦しくなるのが気持ちいい。
「ちなみに今は夜の7時だぞ」
「はっ!?晩御飯の準備してない!!お風呂も入ってないし明日の課題も!!」
「安心しろ。ご飯は準備してるし、お風呂は沸かしてあるからすぐに入れる。明日の課題は今から一緒にやろう。」
そっと体を起こし、抱っこされてお風呂場に移動する。
髪と体を洗いっこして、すぐに濡れた髪を乾かしその後はご飯を食べた。
「偉成の勉強は?今日はもう終わり?」
「うん。もう終わりにする。千紘の課題は手伝うよ」
「ありがとう」
こんなに甘えてていいのだろうか。
わからないけど、偉成の表情はすごく幸せそうだし、匂いだってそうだから、まあ、いいんだろう。
「千紘は俺の膝に座るんだぞ」
「座りません」
「······勉強が捗ると思う」
「硬いからお尻が痛くなっちゃう」
シーン、と沈黙が走る。
偉成はふっと笑って、俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!