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第618話 誉side

部屋に自分以外の誰かがいる違和感が、まだ少し残っている。 泰介と住み始めて早1週間。 そこに泰介がいて、俺の好きな匂いをさせながら一緒に食事をしたりすることに擽ったさを感じる。 「誉君!見て見て!今日小テストで100点だったんだよ!しかもクラスで俺だけ!凄いでしょ!?」 「ああ、凄いな。」 無邪気で、好意だけを見せてくる泰介を頭のどこかでは早く受け入れたいと思うのに、なかなか上手くいかない。 「でもそのせいでまたオメガのくせにって言われてね、正直すごく悔しい。」 「そんな奴の言うことなんか聞かなくていい。どうせただの妬みだ。」 「······わかってるんだけど」 「······俺の言葉だけ信じてればいい。」 きっと、泰介が欲しいのはそういう言葉。 実際に今そう言ったことで、泰介から香る優しい匂いが強くなった。 「誉君、大好きだよ。」 「ああ」 早く言ってしまえば楽になるのに。 俺もだよって伝えられたら、どれだけ幸せか。 心の奥に潜む真緒への罪悪感で、口に出せないのが苦しい。 「大丈夫。誉君、そんな顔しないで。ごめんね、わかってるから。」 「······泰介」 「誉君の気持ちはわかってる。苦しい思いさせてごめんなさい。」 謝らせたいわけじゃない。 そもそも、泰介は何も悪くない。 「泰介」 「はい?ーーっん!」 腕を引いて唇を重ねる。 「誉君っ、大丈夫だから、無理しなくていいから!」 「無理じゃない」 「······悲しそうな表情してるよ。」 「違う、これは······」 真緒は許してくれるだろうか。 体も、次第に心までも泰介を求め始めて、素直になりたいのになれない。 「誉君······」 「悪い、本当······」 「大丈夫だよ。大丈夫」 頭を撫でられて、ざわつく心がゆっくりと鎮まっていった。

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