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第619話
同じベッドで離れて眠っていたのが、最近は朝起きれば泰介を抱きしめていることが多くなった気がする。
今日も目を覚ますと、泰介がすぐ側にいて、いつもは起こさないように優しくするのに、思わずぎゅっと抱きしめた。
「う······っ」
「っ!」
苦しそうな声が聞こえてすぐに力を緩める。
ゆっくり目を開けた泰介は、俺を見て柔らかく微笑んだ。
「おはよぅ、誉君」
「おはよう」
朝から刺激が強い。
弾む胸を抑えて、体を起こす。
「誉君は温かいね。俺ね、寒いの苦手なんだけど、誉君と一緒のベッドだと朝までぐっすり眠れるよ。」
「よかったな」
寝癖のついた髪をわしゃわしゃと撫でてやると、にこっと笑って見上げてくる。
「まだ寝てていいよ。ご飯用意しておく」
「······まだ眠たい」
「うん。だから寝てろ」
布団をかけ直してやれば、またすぐに眠りに落ちる。
規則正しい寝息が聞こえてきて、そっと唇を合わせた。
ベッドから降り、洗面所に行き顔を洗う。
もう少しで冬休みだな。
今年も実家に帰って······ああ、そうだ。泰介のご両親に挨拶しないといけないな。
そんなことを考えながらキッチンに移動して、朝食を用意する。
冬休みに会いに行っても迷惑か。
年末年始はどこの家も忙しいだろうし。
まあ、とにかく1度会って、泰介の家族がどんな人達なのかを確かめる必要がある。
逆に、泰介にも俺の家族に会ってもらわないといけない。
「あ、もう7時か。」
寝室に戻る。
俺の枕に顔を埋めて眠る泰介が目に入って、思わず頬が緩んだ。
「泰介、起きろ。」
トントンと軽く肩を叩くと、枕から顔を上げて薄目を開けキョロキョロと辺りを見渡す。
様子を観察していると視線が俺に止まって、しばらく動かなくなったと思えばまた枕に顔を埋めた。
「こら、起きろって」
「······誉君の匂いが、寝なさいって言う······」
「さっきはちゃんと起きてただろ。ぐずるな」
「······誉君が抱きしめてくれてたからだもん」
ハッとして目を見開いた。
もしかして、あの時起きていたのか。
「布団から出るの寒いから、抱きしめて温めてね。」
「······早く出てこないと飯は無い」
「酷い!」
飛び起きた泰介はジロっと俺を睨み、俺はそれをサッと躱してリビングに出た。
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