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第621話

「お、おお、俺の、って言った······っ!?」 「······ちょっと、言い方が悪かったよな。オメガって性別でお前を指してごめん。」 「いやいやいや、そこは置いておいて!」 テーブルに箸を叩きつけるように置いた泰介はやけに興奮しているようで、立ち上がり俺の傍にやって来たかと思えば強く抱きついてきた。 「俺のって言ってくれた······すごく嬉しい······っ!」 「······痛い」 普段はひ弱なくせに、何で今はこんなに力が強いんだ。 一緒に巻き込まれた腕がキリキリと痛む。 「誉君大好き。俺も、俺の誉君って皆に紹介していい?迷惑かなぁ?」 「別に、なんでもいいけど、紹介する機会が無いだろ。」 苦笑を零すと顔を上げて、俺の首に顔を埋めた。 「俺の好きな匂いがする。」 「早くご飯食べないと遅刻するぞ」 「分かってるけど······もうちょっとだけ」 スンスン匂いを嗅がれると恥ずかしい。 すぐにでも引き剥がしたいのに、上手くいかなくて諦めた。 「あの······誉君、軽蔑しないでほしいんだけどね」 「何?」 急に力が弱まり、腕が解ける。 今度は自信なさげに俺を見て、眉尻を下げた。 「誉君さえ良ければ、もう1回エッチしたい。あれね、すごく気持ちよかった。怖くもあったけど、それより幸せだった。······ごめんね、朝からする話じゃないね。」 寂しげに口角を上げるから、首を左右に軽く振る。 「前に言ったけど、俺にして欲しい事とかしたい事があるなら言って。できることは全部する。軽蔑なんかしない。」 「······本当?」 「本当。······今日の夜でいいか?」 こくっと頷いてチラリと俺を見上げる。 「ほら、早く残り食べて。俺は先に準備してるから」 「うん」 泰介の背中を押して席に戻らせる。 食事を再開したのを確認してから、服を着替えに寝室に入った。

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