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第625話 泰介side
朝、教室前で誉君と別れた。
席に座ろうと振り返る。今日もやっぱり皆と挨拶なんて交わすことなく、自分の席に近づくと、いつもと違う様子に気が付いた。
「ーーッ!」
机に書かれた文字
汚い言葉が羅列してあって、酷く悲しくなる。
でも、泣くことは無い。
今まで何度もこんな目に遭ってきた。
オメガってだけでいじめの対象になる世界なのに、高校に入学してから今まで、無視されることはあっても露骨ないじめはなかった。
ただ、今日たまたま、それが始まっただけ。
無言で席にバッグを置き、どうにか机を綺麗にしないとと思って、雑巾と先生から薬剤を貰って一生懸命に拭いた。
薬剤の匂いはキツくて、それを俺のフェロモンだとからかってきたり、臭いから出て行けって言われたり。
そう言うのは皆ベータの子で、アルファである森君は見て見ぬ振りをしていた。
朝のホームルームが始まり、それから授業と授業の間の短い休み時間でまた、オメガは要らないだとか、淫乱だとか言葉を投げられる。
極力誰の目にも触れないように小さくなって存在を消そうとするけど、無意味に終わった。
昼休みになって、ご飯を食べ、じっとしていると他のクラスのオメガの子が沢山やってきた。
その中に宮間君は居なくて、それにほっとする。
「何でお前みたいなオメガが高梨先輩と番になれるわけ!?」
「······そ、んなこと、言われても······」
ここで運命の番だったなんて言ったら逆上させちゃうかな。
そう思って黙っていると、机を蹴られて膝にガンッと当たった。ちょっと痛い。
「どうせお前が無理矢理噛ませたんでしょ!丘咲君が狙ってるの知ってたくせに!!」
「······丘咲君って誰のこと?会ったこともないよ。」
「とぼけるなよ!森君から聞いてたんだろ!」
そう言われて思い出した。
そういえば前に、森君に幼馴染のオメガが誉君が気になってるから紹介してやってって話をされた。
その幼馴染が丘咲君なんだ。
「でも、やっぱり会ったことないよ。それに、丘咲君にそう言われるならまだしも、関係ないでしょ?」
思ったことを言えば、その子は俺の頬に手を振り下ろした。
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