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第628話

バッグに入っていたタオルで軽く身体を拭いて、最寄り駅で電車に乗った。 泣くのを我慢しながら、電車に揺られて駅に着くと空は少し暗くなり始めていて、慌てて足を動かす。 誉君と番になったあと、実はひっそり真子さんと連絡を取って真緒さんのお墓の場所を教えて貰っていた。 真子さんが関わっていたから、誉君には伝えない方がいいと思ってたくさん嘘を吐いたけれど、やっぱり伝えた方がよかったのかな。 そう思いながら着いた目的地の真緒さんのお墓の前で、力が抜けてへなへなと座り込む。 我慢していた涙が、ポロポロと溢れ出す。 ダメ、初めて会うのに、こんな姿を見せちゃ。そう思うのに堪えられない。 「······真緒さん、初めまして。」 挨拶をして手を合わせる。 「俺、そんなに、誉君に似合ってないのかな······っ」 わかってる。 本当は真緒さんが誉君の傍にいたはずだってことも、誰よりも誉君の隣が似合うのは真緒さんだってことも。 「ごめんなさい。」 真緒さんの代わりに誉君の隣に立ったのが、こんな俺でごめんなさい。 今日は帰るのをやめてしまおうかな。 こんな濡れた服で、しかも泣いた顔で帰ったら誉君が吃驚する。 久しぶりに自分の寮の部屋に帰って、1人でゆっくり過ごそうかな。 そんな時、電話がかかってきて、ゆっくりとした動作でそれを手に取り耳に当てる。 「はい」 「······泰介。お前のクラスメイトから聞いた。風邪ひくから早く帰っておいで。」 相手は誉君で、持っていたスマートフォンを強く掴みながら、唇を噛む。 「今日、は······自分の寮に帰る······」 「ダメだ。それなら俺が今から迎えに行く。何処にいる?」 なんだかすごく、惨めな気持ちで、今は誰にも会いたくない。 「来ないで。大丈夫だから」 「······お前に話がある。ちゃんと話がしたい。だから帰ってきてほしい。それに今日はお前を抱くって話しただろ。」 「······今日はやっぱり無しで」 「無理。今日はとことん優しくするって決めた。居場所吐かないなら色んな機能使って探すぞ。」 そう言われて、仕方が無く覚悟を決めた。 「怒らない?」 「どこにいても怒らない。教えて」

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