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第631話
「······聞かないの?」
「何を?」
何があって、どうして真緒さんの所にいたのか。
誉君は多分、知りたいはずなのに聞いてこない。
「学校で何があったかは聞いた。泰介と同じクラスの森って奴が話してくれた。だから全部知ってる。真緒の所にいたのも、理由はわからないけど会って話したかったんだろ?」
「······謝ってきた」
「謝る?何を」
手をぎゅっと握って、視線を落とす。
「誉君の隣に居るのが、俺でごめんなさいって。」
「······なんで謝るんだよ」
「本当は真緒さんがいいの、知ってるから。」
自分で言ってて寂しくなる。
散々泣いたのに、涙が溢れて頬に流れた。
「運命の番じゃなかったら、誉君はずっと一途に真緒さんだけを愛せたのに、俺みたいなお荷物ができちゃって、迷惑かけてる······。」
「············」
「だから、真緒さんに謝ったの。ごめんなさいって伝えた。許してくれるかは、わからないけど。」
苦笑を零すと、誉君は溜息を吐いて、俺を連れて風呂から上がる。
おざなりに身体を拭いて、服を着せられ、大きな部屋の大きなベッドに座らされた。
「勘違いしてる」
「え?」
頬を撫でられて、優しくキスをされた。
蕩けそうなほど甘いそれに、頭の中はトロトロになる。
「俺は迷惑なんかじゃない。俺にとって泰介はお荷物でもない。それどころか、大切に思ってる。」
「······嘘だよ。だって、いつも苦しそうにしてるもん。」
「今は違うんだよ」
そっと押し倒されて、またキスをされる。ああもう、何も考えられなくなる。
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