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第632話 誉side

学校が終わり、教室でぼんやりしていた。 帰ってもやることは特に無いし、今ここで出された課題をやって帰ろうと、プリントを広げて考えていると、昼間に見た顔がやって来て、申し訳なさそうな表情で謝罪を口にして頭を下げた。 「渡が虐められてても、何も出来なくて······」 「いじめ······」 この1年の名前は森辰明。 話を聞けば、いじめの主犯である丘咲の幼馴染らしい。 丘咲は昼間に、俺と泰介との関係を聞いてきた1年だ。 「高梨先輩と番になったことを、責めてました。どうしてお前がって。」 「······それをお前が俺に言いに来たのは罪悪感から逃れるためか?」 「······そう、ですね。」 視線を逸らす森は頭を深く下げて「すみませんでした」と言う。 「泰介は?」 「······水掛けられて、バケツも投げつけられてて······でも用事があったみたいで、慌てた様子で帰って行って······」 「は?水?」 「はい」 こんなに寒いのに、何を考えているんだ。 溜息を吐くと森はビクッと肩を震わせる。 時間はもう17時。 どうしてもっと早く言いに来てくれなかったんだろうか。 「濡れたままで行ったんだよな?」 「だと思います」 外はもう暗くなっている。 状況を理解した途端、冷静だったはずが一気に不安が襲ってきて慌ててスマートフォンを取りだし泰介に電話をかけた。 泰介を迎えに行く為に電車に揺られながら、どうして泰介が真緒に会いに行ったのかが気になって、やっぱり俺がいつまでも真緒に縛られているのが理由だろうと考えた。 いい加減に、この気持ちにケジメをつけないといけない。 丁度、向かっているのは真緒のいる場所だ。 大丈夫と自分に言い聞かせる。 真緒はわかってくれる。 素直になっていいと、言ってくれるはず。 *** うるうるとした涙の溜まった目で俺を見上げる泰介。 ベッドに押し倒して、何度もキスをすると、ついに堪えきれなくなった涙が目尻を伝って零れていく。それを舐めとると泰介はスッと目を細めた。 「誉君······」 「話したいことがある。ずっと言えてなくて、でも今日やっとケジメがついた。」 「な、に」 少し脅えているような、そんな感情が匂いに乗って伝わってくる。

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