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第645話
***
昼は眠ったりテレビを観たりしてゴロゴロ過ごした。
日も暮れて、そろそろご飯だなと思っていると、コンコンとドアがノックされる。
返事をすると母さんが入ってきて、泰介は慌てて立ち上がった。
けれど朝から激しくしたせいで、まだ違和感があるらしく、ふらついた体をそっと支える。
「泰介君も一緒に食事をどう?よければ2人のお話を聞かせてほしいの」
泰介を見て「いけそう?」と聞くと、大袈裟に首を縦に振る。
「も、もちろんです!あの······お邪魔させてもらってるのに、挨拶できないままですみませんでした。」
「体調が悪かったことは聞いているし、気にしないで。さあ、行きましょう。」
母さんに促され、泰介を支えながら部屋を移動する。
泰介からは不安を感じている香りがして、そっと背中を撫でた。
「大丈夫。食事するだけ。」
「······うん」
「何も言われたりしない。安心しろ」
頷いて返事をした泰介。
部屋に着き、中に入ると父さんもいて、泰介は勢いよく頭を下げた。
「お邪魔してます!」
驚いて固まっていると、父さんが豪快に笑い出す。
「元気な子じゃないか」
そう言って嬉しそうに微笑んでいる。
席に座り、俺は泰介の紹介をした。
「渡泰介。高校1年生オメガで俺の運命の番。」
「渡泰介です!よろしくお願いします!」
まだ食事は運び込まれてなくて、4人でしばらく談笑する。
泰介から不安の匂いは消えて、俺も安心した。
「体調はもう良いのかしら。何も聞かずに連れてきてしまったけれど······」
「大丈夫です!もう治りました!」
「よかった。昨日来た時は服が濡れていたって聞いていたから、酷い風邪をひいたのだと思って······。どうして濡れていたの?······あ、あまり聞かない方がいい話かしら」
泰介はちらっと俺を見て、苦笑を零しながら話し出す。
「学校でふざけて遊んでて······」
虐められた事は母さん達には言いたくないらしい。
泰介が言いたくないなら俺も言わない。
料理が運ばれてきて、手を合わせ食事を始めた。
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