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第648話

*** 目を覚まし、誉君から借りた服に着替えてお家を出た。 10時を過ぎて乗る電車は少し人が少なくて、誉君と手を繋ぎながら、座席に座り軽く誉君に凭れて学校の最寄りの駅まで向かう。 「帰ったら1人になるの寂しい」 「すぐ帰るよ」 「······すぐじゃないよ」 「じゃあ昼に寮を出て3時半までには帰る」 本当は今日1日一緒にいてほしいけど、我儘ばっかり言ったら誉君に悪いから我慢する。 「泰介」 「何?」 「······何でも、俺にしてほしいことがあれば言ってくれ。」 「うん。ありがとう」 同じ車両の離れた席にしか人がいないことを確認して、誉君の頬にちゅっとキスをする。 「好きだよ」 「俺も」 今度は誉君から唇を重ねてきて、ふふっと笑っちゃう。 「あと少しだね。ちょっとお尻痛い」 「立った方が楽?」 「んー、ううん、大丈夫。」 ずっと座ってるのも疲れる。 誉君の手をニギニギと、力を入れたり緩めたりして時間を潰す。 「今度、泰介の家族に挨拶しに行きたい。」 「え!?」 突然そう言われて驚くと、誉君は真剣な表情で俺を見る。 「挨拶に行って、ちゃんと認めてもらわないと。」 「あー、そうだね。」 多分、母さんも父さんも目を剥くと思う。 まず番ができたことに悲鳴をあげて、その上運命であったことに卒倒するに違いない。 「泰介?」 「あ、ごめんね。······あの、うちの親変わってる人なんだけど、気にしないでね。」 「え?······わかった。」 誉君に引かれないかどうかが1番心配だ。

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