648 / 876
第648話
***
目を覚まし、誉君から借りた服に着替えてお家を出た。
10時を過ぎて乗る電車は少し人が少なくて、誉君と手を繋ぎながら、座席に座り軽く誉君に凭れて学校の最寄りの駅まで向かう。
「帰ったら1人になるの寂しい」
「すぐ帰るよ」
「······すぐじゃないよ」
「じゃあ昼に寮を出て3時半までには帰る」
本当は今日1日一緒にいてほしいけど、我儘ばっかり言ったら誉君に悪いから我慢する。
「泰介」
「何?」
「······何でも、俺にしてほしいことがあれば言ってくれ。」
「うん。ありがとう」
同じ車両の離れた席にしか人がいないことを確認して、誉君の頬にちゅっとキスをする。
「好きだよ」
「俺も」
今度は誉君から唇を重ねてきて、ふふっと笑っちゃう。
「あと少しだね。ちょっとお尻痛い」
「立った方が楽?」
「んー、ううん、大丈夫。」
ずっと座ってるのも疲れる。
誉君の手をニギニギと、力を入れたり緩めたりして時間を潰す。
「今度、泰介の家族に挨拶しに行きたい。」
「え!?」
突然そう言われて驚くと、誉君は真剣な表情で俺を見る。
「挨拶に行って、ちゃんと認めてもらわないと。」
「あー、そうだね。」
多分、母さんも父さんも目を剥くと思う。
まず番ができたことに悲鳴をあげて、その上運命であったことに卒倒するに違いない。
「泰介?」
「あ、ごめんね。······あの、うちの親変わってる人なんだけど、気にしないでね。」
「え?······わかった。」
誉君に引かれないかどうかが1番心配だ。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!