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第649話
駅に着き、手を繋いだまま一緒に寮までの道を歩く。
「何か買って帰ろうか。昼ご飯作る時間無いから」
「うん」
スーパーに寄って、好きな物を買い再び帰路に着く。
帰ってしまえば誉君と少しの間離れてしまうことが分かっているから、歩幅を小さくして足を動かした。
暫く誉君にピッタリくっついていたから、余計に寂しく感じるのかもしれない。
「疲れた?」
「······ちょっとだけ」
歩幅が小さくなったからか、誉君が心配そうに俺を見るけど、素っ気なく返事をした。
どれだけ遅く歩いてもやっぱり寮に着いてしまって、ご飯を食べるとすぐに制服に着替えようとする誉君に、思わず手を伸ばして抱き着いた。
「泰介?」
「ごめんなさい。やっぱり行ってほしくない」
「寂しい?」
「······うん。」
正直に白状すると、誉君に頭を撫でられ、その手が俺の顎を掬って顔を上げさせ、キスをされる。
「いるよ。一緒にいる。」
「ごめんね」
「謝らなくていいから。大丈夫」
額同士がコツンと当たり、そっと目を閉じる。
移ってくる熱が心地よくて、誉君の首に腕を回した。
「思ってる事は全部言ってくれればいい。言っただろ?俺にしてほしい事があればなんでも言ってって。我慢しなくていいんだよ」
「でも誉君の迷惑になるかもしれないし、負担になるのは嫌だもん。」
抱き上げられ、ソファーに移動する。
座る誉君の膝に座らされ、そのままギュッと抱き締められる。
「迷惑じゃないし、負担にもならないよ。それどころか泰介に頼られない事の方が嫌だ。」
「そうなの?」
「ああ。多分、本能なんだと思う。泰介に頼られる事は嬉しく感じるんだ。」
笑みを浮かべた誉君から優しい匂いがして、それを嗅ぐと幸せな気持ちになれる。
「今日もゆっくり過ごそうか。何かしたいことある?」
「ううん」
誉君の首筋に顔を埋めると、幸せな気持ちが増幅していく。
「泰介······あんまりそんな匂いさせないでくれ」
「え、何?」
「無意識だからわからないと思うけど、誘ってるような匂いさせてる。」
顔を離して誉君を見ると、何かに耐えるような表情をしている。
「あの、ご、ごめんなさい······?」
「いや、いいんだけど······。」
誉君が苦笑を零して、俺の頬を優しく撫でた。
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