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第651話
「遅いぞお前ら」
匡が叱責すると寒沢君はヘラヘラ笑っていつもの場所に腰を下ろす。
「いい匂いがしたから行ったら発情してるオメガが居てさ、慌ててオメガの部屋に押し込んできたんだよ。」
「大丈夫だったの?」
それならすぐに連絡をくれたらいいのに。
そう思いながら聞けば、井上君が頷く。
「大丈夫。抑制剤がよく効く子だったみたいで、15分もすれば寮に帰ったよ。」
「良かった······」
「パートナーもいたみたいだし。なんて言ったかなぁ······1年の森って名前のアルファと、丘咲っていうオメガだった気がする。」
え、と零して宮間君を見ると、宮間君もキョトンとしていた。
「パートナーってどういう意味?」
「まだ番にはなってないみたいだけど、森君は丘咲君が好きなんだろうなーって。それに丘咲君も満更じゃない感じだったし」
首を傾げる俺と宮間君。
匡は1人納得していて、俺達は置いてけぼりだ。
「ていうか君は誰?」
井上君が宮間君に話しかける。
宮間君は慌てて自己紹介をして、「帰ります!」と言って生徒会室を出て行った。
「宮間君は何でいたの?」
「1年生でいじめがあったみたいで、その事について話に来てくれてたんだ。」
「ふーん」
「いじめられたのが渡君で、その子は高梨先輩の運命の番。」
今度は井上君と寒沢君が驚いて、その反応が面白くてくすくす笑う。
「すげえなこの学園。運命の番が2組も出たのかよ。」
資料を投げて寄こしてきた寒沢君が、感心したように俺を見る。
「俺も番欲しいな」
「寒沢君は楽しいし面白いからすぐ恋人できそうだけど?」
「んー、番は欲しいけど、でも束縛されたくねえんだよな。色んな人と遊んでたい」
反応に困ってると匡がフッと、寒沢君を馬鹿にしたように笑った。
「いざ番になれば、そんな考えは一切無くなると思うぞ。」
「へえ。でも例外があるかも知んねえだろ」
「そうかもな」
匡は寒沢君の言葉を聞く気がないのか、すぐに仕事を始めて、生徒会室の雰囲気はいつもより少しピリッとしていた。
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