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第655話 誉side
俺の肩に顔を埋めたまま動かない泰介。
俺を探している間に迷子になったらしく、偉成の部屋で会った時は泣きそうな顔をしていた。
抱きしめると途端に小さく震えて泣き出して、偉成達にはバレないように泰介の顔を隠したまま部屋を出る。
「迷子になったんだってな」
「······帰ろうとしても、場所がわからなくて」
「それが不安だった?」
「ううん······それもあるけど、知らないアルファがいっぱい居たから······」
部屋に戻り、ソファーに座って泰介の背中を撫でながら頭をコツンと合わせる。
「もう大丈夫だから、泣き止んで。」
「ん、泣いてないもん」
顔を上げた泰介はぐっと眉間に皺を寄せて俺を睨む。
「そうか?じゃあ何で濡れてんの?」
「······鼻水」
「頬に鼻水がつくかよ」
笑って涙を拭ってやると、泰介は漸く安心したように小さく息を吐いた。
「誉君」
「何?」
俺の名前を呼んだきり、何も言わなくなった泰介は俺の上から降りると風呂に入りに行く。
あとを追いかけようか悩んだけれど、それより先に、明日森に泰介を虐めた奴らをどうにかして連れて来させようと考える。
「せめて、謝らせたい。」
泰介はもともと、優しい性格で、話せば誰とも仲良くできるんだ。俺が好き勝手に動いて泰介と仲良くなれるはずの人間をも排除するのは違う。
さっき偉成に言われたのはそういう事だと思う。
少しだけ反省して、手元に視線を落とす。
少し事が解決すると悩みが無くなり欲が出てくる。
どうしよう。泰介と一緒に風呂に入りたい。
······入るか。
立ち上がって着替えを持ち、風呂場に行くと、泰介は鼻歌を歌いながらシャワーを浴びていて、ドアを開ければ驚いて体を隠している。
なぜか胸を隠していて、可愛いけれど、そこじゃないだろ。と思ってしまった。
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