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第656話
「何で入ってくるの!」
「入りたくて」
泰介はジト目で俺を見る。
「あんまり見ないでよ」
「うん」
「······歌って気持ちよくなってたのにぃ」
「気にせず続けてくれ」
「嫌だよ。恥ずかしいもん」
シャワーを浴びて髪と体をサッと洗って湯船に浸かる。
泰介も同じようにして湯船に入り、見ないでって言ってきたくせに俺の足の間に入って、背中を胸にピタリとくっつけてくる。
「見ないでって言ったのに」
「見るのとくっつくのは違うんだよ」
そう言って、俺にググッと体重を掛けてくる。
泰介は軽いから、何の負担にもならなくて、お腹に手を回しもっと引き寄せた。
「あの······お尻に、当たってる······」
「当ててる」
一緒に風呂に入っていることが嬉しいのか、それとも泰介が甘えてくれるのがいいのか、中心が熱を持ち始めている。
「触っていいか?」
「······うん」
指を滑らすようにして肌を撫でる。
擽ったいのか、クスクス笑いながら身を捩って逃げようとするのも愛しい。
「誉君、キスしたいな」
「ん」
後ろから泰介の顎を掬って唇を重ねる。
深くなる口付けに泰介のくぐもった声が反響して、そっと離れるとツーっと垂れるそれ。
濡れている唇を舐めて切った。
「はぁ······甘い、ね······?」
「そうだな」
お互いの唾液はまるで媚薬のようだ。
いよいよ我慢できなくなって立ち上がると、泰介の腕が腰に絡んでくる。
「あの······やってみたいことが、あります······」
「え、今?」
結構ギリギリなんだけど。
戸惑いながら泰介を見れば、首を振っていて、簡単に俺が折れた。
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