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第661話
次の日、誉君は学校に行ってしまった。
俺はベッドに寝転んだままでお母さんに電話をかける。
まだ番になった事を話していないし、しかも運命の番だからきっと驚かれるだろうな。
「もしもし!」
暫くコール音が鳴った後に、息の切れた様子でお母さんが電話に出た。
「あ、もしもし。今大丈夫?」
「うん!どうしたの?」
胸がドキドキする。
口から心臓が出ちゃいそう。
「あの······あのね、番が、できたの」
「······番!?」
お母さんが大きな声を出して、その後ろからお父さんの驚いた声も聞こえてきた。
「番って、あの番よね?」
「うん、多分その番だよ。あとね、それが運命の人だったんだ。」
「運命の番なの!?」
後ろから拍手が聞こえてくる。
お父さんの「よくやったぞ」という声も。
「会わせて!泰介の運命の人見たいわ!」
「うん。その人もそう言ってくれててね、だから予定を決めたいんだ。」
「すぐスケジュールの確認して連絡するから待っててね!······ところで、今は学校の時間じゃないの?」
ハッとして時計を見ると、時間は朝の10時。
何も考えずに電話したから、やってしまったという感情がすごい。
「実は、ちょっと、いろいろあって」
「······また嫌なことされちゃった?」
「······うん」
いじめなんて初めてじゃない。
お母さんもそれはわかっているから、俺に何を言うことも無い。
「学校の事は気にしなくていいからね。今は泰介の幸せの事だけを考えるのよ。」
「······ありがとう」
「番の人にもいっぱい甘えちゃいなさい!泰介は頑張りすぎちゃうから、我慢しないで。いつでも帰ってきていいんだからね。」
「うん」
やっぱりどこか疲れていた気持ちが、少し楽になる。
さっき別れたばかりなのに、誉君に会いたい。
「あのね、誉君って言うんだよ。」
「番の人の名前?同い年?」
「ううん、2つ先輩。今は3年生でね、前まで生徒会の副会長だったんだって。」
「年上なのね。やだぁ、先輩後輩って憧れるシチュエーションじゃない!」
お母さんのテンションが高くて、思わず苦笑を零す。
誉君に会う時にはもう少し落ち着いていて欲しい気もする。
電話を終えて、誉君の枕に顔を埋めた。
大好きな匂い。
早く隣に帰ってきて。
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