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第662話
昼ご飯の時間になって、のそのそとベッドを抜ける。
カップラーメンを食べようキッチンを漁り、美味しそうなそれをテーブルに置いてお湯を沸かしていると、誉君の匂いがして、玄関に行けばちょうどそこで靴を脱いでいた。
「誉君!」
「ただいま。お腹減っただろ」
「今カップラーメン作ってるところなの」
「カップラーメン?」
一緒にキッチンに行くと、誉君は置いてあったカップラーメンをじっと見て俺を振り返る。
「本当にこれ食べたい?そうじゃないなら今から作るけど、どうする?」
「えっ、そんなの大変だからいいよ。俺はこれで」
「本当に食べたいわけじゃないなら、ちゃんとしたご飯たべてほしい。」
「······わかった」
頷いてお湯を沸かすのをやめると、誉君は満足したように少し微笑んで俺の髪を撫でる。
「何食べたい?」
「なんでも」
「わかった」
手を取られ、リビングに移動してソファーに座るように促されそこに座ると、頬にキスされて思わず頬を手で覆う。
「ちょっと待ってて」
「ぅ、あ、はい······」
体がぶわっと熱くなって、胸がドキドキ音を立て始め、思わずソファーに顔を埋めて足をバタバタとさせる。
何あれ、格好いい。
誉君が甘くて暖かくて優しくて、俺にはとてももったいない。
「誉君」
「ん?」
キッチンに戻っている背中に声を掛け、振り返ってくれたことが嬉しくて口角が自然と上がる。
「好き!誉君が大好き!」
「何だ急に。俺も好きだよ」
「はぅっ······!」
心臓を押さえると誉君がくすくす笑って、そのままキッチンに消える。
あんなに格好いい人を俺はお母さんとお父さんに紹介する訳で、絶対に2人とも興奮して誉君に質問責めする未来は見えていて、申し訳ないなと思いながらも後でお母さん達と会う日のことを話すことに決めた。
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