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第663話
お昼ご飯に出てきたのはカルボナーラだった。
卵も乗ってあって美味しそう。
「いただきます」
手を合わせてフォークを持ちパスタを巻きつけて食べる。
「美味しいっ!」
「よかった。」
誉君もパスタを食べて、その様子をぼんやり見ながら「あのね」と話しかける。
「お母さん達が、誉君に会いたいって。」
「連絡したのか?」
「うん。でもね、本当に凄いから······」
「会うよ。予定わかる?」
「あ······あとで連絡してくれるって。ねえ、本当に凄いんだよ?しんどくなったら言ってね、絶対我慢しないでね?」
頷いた誉君だけど、本当に我慢しないでいてくれるのかが不安だ。
「ご両親は何をされてるんだ?」
「自営業なんだ。でも俺は仕事の事は全然知らない。」
「そうか」
「······ごめんね、何も知らなくて。」
「そんなの別にいい。またご両親から連絡が来たら教えてくれ」
「うん」
食事が終わり、誉君はまた学校に戻るらしい。
寂しくなって、お皿洗いをしていた誉君の服の裾をキュッと掴んでみる。
「どうした?」
「······行っちゃうの?」
「寂しい?」
「うん」
わがままばかり言って、甘えすぎだって分かってはいるけれど、傍にいてほしい。
「泰介」
「······ごめんなさい。」
「何で謝るんだ。」
タオルで手を拭いた誉君は振り返って、俺を抱き締めてくれる。そっと頭を撫でられて胸に頬をつけると安心できて、目を閉じた。
「一緒にいようか。」
「いいの?」
「もちろん」
嬉しくて強く抱きつく。
寂しい気持ちがなくなっていく。
「向こうでゆっくり過ごそう。一緒にいるから、寂しくないよ。」
「うん」
誉君に手を取られてリビングに移動し、ソファーに座る。
ぴったりとくっ付いているのに嫌な顔一つしないから、優しさに心が穏やかになった。
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