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第664話 千紘side
「もう年末だね」
「そうだな」
明日に終業式を控えた今日。
最後に生徒会の掃除をして、寮に戻ったのは夜の7時頃。
部屋の掃除をしていた偉成は1度作業を中断して一緒に食事をとった。
「高梨先輩は動いてるの?渡君のこと」
「いや、暫く休んでる。」
「そうなの?渡君と一緒にいるのかな?」
「さあ」
食事が終わると、掃除を再開してそれが終わってから偉成と一緒にお風呂場に向かう。
髪と体を洗って湯船に浸かり、偉成と向き合った。
「偉成の試験は年明けすぐだっけ?」
「ああ。」
「······ねえ、疲れてる?」
いつもより少し冷たい雰囲気をしている気がする。
「いや、ごめん。ちょっと考え事をしてて」
「考え事?」
手を伸ばして頬に触れると、甘えるみたいに手に擦り寄ってくる。
「何かあった?」
「いや、そういう訳じゃなくて。年末年始についてなんだけどな、俺はどうしても一緒に初詣に行きたい。」
「え?うん。」
初詣に行くのに、何をそんなに考えることがあるんだろう。
「やっぱり元旦に行っておきたくて、でも俺と千紘の家は遠いだろ。そうなるとどちらかの家に泊まるのが1番いいと思うんだ。」
「そうだね?」
「だがな、年末年始に千紘を借りるわけも行かないし、千紘の家にお邪魔するのも迷惑だろ。だからどうしようかと考えていた。」
「えー?そんなこと?」
笑って言えば、偉成はムッとして「そんなことじゃない」と唇を尖らせる。
「年末年始は家族だけで過ごしたいって思う人は多いと思う。」
「まあ、それはそうかもしれないけど、だってほら、俺達もう番なんだし家族同然でしょ?」
番関係を解消する気なんてないんだし。
「家族同然か······嬉しいな。」
照れくさそうに笑った偉成が可愛くて、俺も釣られて笑っちゃう。
手が伸びてきて、抱きしめられ、至近距離で見つめ合うとどちらともなくキスをした。
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