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第665話
お風呂からあがり、早速母さんに電話をしてさっきのことを伝える。
「え、千紘を元旦に?全然貸し出すわよ?」
「貸し出すって······物じゃないんだけど!」
母さんとケラケラ笑い合う。
偉成も聞こえていたみたいで、苦笑している。
「なんなら旅行でも行ってきたら?」
「旅行は無理でしょ。今からホテルは取れないし」
「偉成君なら取れるんじゃない?」
母さんの言葉を聞いて偉成を見るけど、また苦笑を零して首を左右に振る。
「無理だって」
「あら、そうなの。千紘を貸し出すのはいいけど、偉成君のおうちに泊まるの?それは迷惑じゃない?」
俺を介して母さんと偉成が話すのが面倒臭くて、スマートフォンを偉成に渡す。
2人で話をしているのをよそに、俺は1人寝る準備をしてベッドに入って偉成が来るのを待った。
ああ寒い。
暫くして寝室にやってきた偉成はやけに嬉しそうだ。
「千紘の貸し出しが許可された」
「······物じゃないってば」
あまりに嬉しそうだから、小さく笑いながら手招きして偉成を隣に寝転ばせる。
「大晦日に家においで。」
「わかった」
自然な動きでそっと後ろから抱きしめられ、温かさにほっとする。
「明日、帰ってきたら荷物片付けて、明後日の朝家に帰るね。大晦日は偉成の家に行く。」
「ああ」
「もう眠い。寝る」
「うん。おやすみ」
項にキスをされ、それが気持ちよくてもっとして欲しくなっちゃう。
我慢して布団を掴み、そのまま眠りに落ちた。
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