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第666話
***
翌日、終業式が終わり寮に帰り部屋の掃除をした。
荷物を纏めていると偉成が帰ってきて、寂しいという匂いをさせながらじっと見てくる。
「すぐ会えるのに寂しいの?······このやりとり前もした気がするね。」
「寂しい。3日は会えないから」
「毎日連絡するよ」
「会いたいんだよ」
「もう」
苦笑しながら手を伸ばすと、俺の胸に飛び込んでくる。
抱きしめて頭を撫でると嬉しそうな匂いに変わった。
「あー、落ち着く。」
「今日はこうして眠る?」
「ああ」
偉成がこうして甘えてくるのは珍しい。
いつもは逆の立場だから、甘えられることが嬉しくて口角が上がる。
だから今日は沢山甘やかしてあげようと思った。
「今日は俺がご飯作ろうか?」
「忙しいだろ。いいよ、俺がするよ。」
「······じゃあ、一緒に。」
別に忙しくはないけれど、一緒に何かをするのは楽しい。
「千紘、興奮してきた」
「はぁ?」
腕の中にいた偉成が突然そう言い出して、手を動かし俺のお尻を撫で始めた。
「ちょっと。忙しいだろって言ったくせにそういうことするの?」
「······今から全力でいいホテルを取ろうか」
「え、大晦日の日に?無理でしょ」
「いや。頑張れば······。」
「こういうことするためだけに取るなら、それは必要ないと思うけど。」
そう言って手を離すと、偉成は不満そうな表情をして俺から離れた。
「特別な場所で過ごしたいと思ったんだ」
「それは嬉しいんだけどね、お金がかかるし。」
「その心配はいらない!俺が出す!」
「えー······」
そういうや否や、どこかに電話をかけ始めた。
どうやら本気でどこかに泊まろうとしているらしい。
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