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第669話
家に帰ると、母さんがいて、夜には父さんが帰ってきた。
以前までとは想像がつかないくらい、父さんと話をするのが楽になって、夜ご飯の時には3人で笑いあうくらいだ。
「大晦日は偉成君と旅行に行くんだろう?」
「そうなんだ。偉成が急に······。」
どこに行くのかも知らないし、お金はいくら必要なのかもわからない。
「お金は父さんが出すから、楽しんでおいで。」
「えっ、あ······ありがとう······」
なんだかこそばゆい気持ちになって、肩を竦める。
「よかったわね!」
「うん」
母さんは柔らかい表情でそう言って、食事を再開する。
夜ご飯を終えて、部屋に戻り旅行に行くための準備をしていると、部屋のドアがノックされた。
返事をするとゆっくり開く。
そこには父さんが立っていて、手には封筒を持っていた。
「これ。さっきも言ったけど、楽しんでおいで。」
「ありがとう」
中身はどうやらお金らしい。
有難く受け取って、大切にバッグに入れる。
「あと······前に偉成君の家に行って以来、ちゃんと話せていなかったが······、今まで千紘を性別で判断して蔑ろに扱ったり傷つけたりしてすまなかった。」
「それはもういいよ。あの時も謝ってもらったもん」
「······謝ったからといって、あの過去がなくなるわけじゃないのに、千紘は俺に優しく接してくれるんだな。」
そりゃあ確かに、前までは腹が立っていたし極力話さないようにしていた。
けれど、もういい。
だってちゃんと謝罪を受けて、それに今は──······
「父さんも俺に優しくしてくれるでしよ?こうやって旅行に行くお小遣いもくれるし。本当に嬉しい。ありがとう」
「······父さんの方こそ、ありがとう。」
年が明ける前に、父さんの中にあった蟠りも解消できたみたいで、スッキリとした気分になった。
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