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第679話 泰介side
学校も休みに入り、渋々誉君と別れて、夕方頃に実家に帰る。
母さんと父さんは笑顔で「おかえり」と言って、母さんは俺を強く抱きしめる。
「学校、疲れたでしょ。暫くはゆっくり休んでね」
母さんはしばらく抱きしめたまま離してくれなかて、大人しくしていると、「そうだ!」と突然大きな声を出して俺の肩を掴み体を離す。
「この冬休みに番の人が来てくれるんでしょ?お母さんおめかししなきゃ!髪切ってくるわ!」
「え、なんで?今の長さ似合ってるよ」
そう。冬休みの間に家に誉君が来てくれることになった。
嬉しそうにする母さんは、「でもやっぱり」と言って、毛先を一束掴む。
「パーマでもあてようかしら!」
「ていうか、何でお母さんがおめかしするのさ。俺の番なんだよ。」
俺の番になんでおめかしした姿を見せる必要があるんだろう。
格好いいって言ったから緊張しているのかな。
「お名前は何だっけ?確か······誉、君?」
「うん。高梨誉君。3年生で、卒業したらお家の仕事のお手伝いだって。将来は家業を継ぐらしいよ。」
「偉いわねえ。」
家に上がって、部屋に荷物を置きに行き、すぐにリビングに行ってお母さんの用意してくれたご飯を食べる。
「確か5日に来るのよね?楽しみだわぁ」
「マシンガントークはダメだからね!」
「いつもそんなに話してるつもりはないのよ」
そう言って、母さんも父さんも笑っているけれど、俺は笑えない。だって本当に凄いんだ。誉君が困るのは目に見えている。
「ご馳走様!」
「お風呂湧いてるから先に入っておいで。」
「うん」
着替えを持ってお風呂に入る。
お風呂の鏡に映る自分は、なんだか前よりも丸くなった様な気がした。
「誉君のおかげで、幸せ太りだ」
ついつい口元がにやけて、だらしないだろう顔に熱いお湯をかけた。
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