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第681話
***
「誉君!」
年が明け、5日になった。
俺の家の最寄り駅まで、誉君を迎えに行って、久しぶりに再開する。
「泰介」
誉君を見つけた途端、俺の大好きな甘い香りがして、それが誉君が喜んでいる匂いだと知っているから、嬉しくてたまらない。
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします!」
「あけましておめでとう。俺の方こそ、今年もよろしく。」
抱きついて、胸いっぱいに誉君の匂いを嗅いで、それから漸く手を繋ぎ、家までの道を歩く。
「母さんね、誉君が来るって張り切りすぎて大変なんだよ。髪切って、毛先にパーマ当ててね。それを見た父さんが母さんがまた可愛くなったって言って喜んでね······」
「お父さんが喜んでいるならよかったな」
「それはそうだけど、誉君が格好いいって伝えたから気合い入れてるの。でもね、誉君は俺のなんだよ。」
サラッと恥ずかしいことを口にしてしまって、足を止めて片手で顔を隠す。
「泰介?」
「······ごめんね、すごく恥ずかしい事言った。それに、誉君を物みたいに言っちゃった。」
「俺は嬉しかったし、そういうつもりないって知ってるから別にいいけど。泰介は俺のものなんだし。」
「はぅっ!」
胸がキュンキュンして、今度は片手で胸を抑える。
「泰介、行かないか?」
「い、行く、わかってるんだけど、ちょっと······破壊力がすごい。」
「よくわからないけど、こっちであってる?進むよ」
「うん」
俺が案内しないといけないのに、誉君が手を引いて先を歩いて行く。
すぐに気持ちを切り替えて、誉君の横に並び、次はこっちね、と進行方向を伝えた。
再開してから、まだキスをしていない。
そう思い始めると無性にキスがしたくなってきて、伝えるべきかどうかとモジモジしてしまう。
「何?どうした?」
「あ、あの······」
それを見た誉君は、くすくす笑いながら俺を見下ろす。わあ、その顔も素敵。格好よくて蕩けちゃいそうだ。
「ま、だ······キス、1回も、してないなぁって。」
「外だけどいいのか?」
「······それは恥ずかしいから、せめて······あの、物陰に隠れませんか?」
「却下。面倒臭い。今する」
背中を屈めた誉君が、チュッとキスをしてくれる。
「実は俺もまだしてないなって思ってた。したかったけど、人目もあるし恥ずかしがるだろうから、後にしようって。」
「ぁ、う······」
「でももう関係ないな。これからは外でもする。」
「ダメです!!」
真っ赤になってるであろう顔を、誉君の胸に押し付けて、落ち着くまでそのままでいた。
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