682 / 876
第682話
漸く家に着いて、鍵を開け部屋に上がる。
「お母さん!誉君が来たよ!」
「誉くーん!!いらっしゃい!!」
お母さんが走ってきて、誉君の前で急ブレーキをかける。誉君は驚いて目を見開いているし、俺も思わず繋いでいた手をギュッと強く握ってしまった。
「あらぁ、聞いていた通り格好いいわね。素敵!足も長くて······うちの子も可愛いけど、誉君は本当に綺麗なお顔で······。こんなに格好いい人が泰介の番なの!?しかも運命!?神様はなんて素敵な采配をされたのかしら。私は一生神様にお礼を言わないと。ありがとう神様。ありがとう──」
「母さんお願い。落ち着いて」
誉君が苦笑しながら、手に持っていたお土産をお母さんに渡す。
「あら、ありがとう!そんな、気を遣っていただかなくても良かったのに。今からみんなで食べましょう?」
「はい。お邪魔します」
リビングに行くと父さんもいて、テーブルの席に座り珈琲を飲んでいる。
「お邪魔します。高梨誉です。」
「誉君。いらっしゃい。」
柄にもなく緊張している様子の父さん。
厳格そうに見せようとしてるんだろうけど、俺は気づいてる。カップを持つ手がガクガク震えてることに。
「もう!いつも通りでいいってば!」
「ち、父、父親と、しての、威厳を」
「おかしくなってる!緊張しておかしくなってるよ!」
カップの中の珈琲も波をうっていて、誉君はやっぱり苦笑しながら、俺を見る。
「ごめんね、ごめんね本当に。あの······こっち座って?」
「ありがとう。大丈夫だよ」
「誉君は珈琲でいいかしら?紅茶の方がいい?」
「あ、いえ、珈琲で大丈夫です。」
席に着いた誉君の隣の椅子に腰を下ろした。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!