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第683話
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「じゃあ誉君は勉強もできるのね!容姿端麗で勉強もできるなんて言うことないじゃない!」
「お父さんは1度、反対する言葉を言ってみたかったんだがな。······そうだ誉君。俺の夢を叶えてくれないか。『泰介を僕にください』と言ってほしい。そうしたら俺が『どこの馬の骨かもわからんやつに俺の大切な子供を渡すものか』と言うから。それで俺の夢は叶うんだ。」
「え、わ、かりました。」
変なお願いをする父さんと、困っている誉君。
俺は顔を覆って恥ずかしさに耐える。
やめてって、そういうの本当にやめて。
誉君はすごい人なんだよ。だってだって、生徒会の副会長もしていたし、なんたってαなんだ。
そんな遊びに付き合わせるなんて恥ずかしくて仕方がない。
咳払いをした父さんが、姿勢を正して誉君を見る。
「じゃあ、君のタイミングで頼むよ。」
「は、はぁ······。じゃあ······」
スン、と空気が変わって、誉君の雰囲気が変わる。
「泰介君を僕にください。」
その言葉にキュンキュンとして、口元を手で覆う。
お父さん、やっぱりさっきのは訂正、グッジョブだ。
「どこの馬の骨かもわからんやつに、俺の大切な子供をわたすものか!」
思わず肩を落として、部屋にも沈黙が続く。
誰もこの後のことは考えていなかった。
「いやー、夢が叶ったよ。ありがとう誉君。もちろん泰介とのことは許すよ。2人で末長く愛し合って生きていくんだよ。」
「ありがとうございます」
ここにツッコミ担当は存在しない。
母さんは何故か拍手をしているし、父さんは嬉しそうに笑ってる。
「誉君、ごめんね······」
俺はそっと誉君に謝って、誉君は「大丈夫。楽しいよ」と天使のように優しい言葉をくれた。
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