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第685話

少しすれば熱は治まり、漸く誉君と一緒に家を出た。 手を繋いで近くの神社に行く。 「本当に大きいところじゃなくてよかったの?」 「うん」 参拝して、周りにあった屋台でひとくちカステラを食べて、近くをプラプラと歩いてから家に戻る。 夕方頃になって、もう帰るという誉君の服の裾を掴みながら、何度目かの台詞を口にする。 「誉君、本当に帰っちゃうの?」 「帰らないと。長居しても迷惑だからな。」 「泊まっていっていいんだよ?母さんに言ってみてもいい?」 「だめ。急に泊まるのはもっと迷惑になる。」 そう言われ、渋々掴んでいた裾を離す。 優しく頭を撫でられて、もっと離れ難くなる。 「明明後日にはお互い寮に帰るだろ。」 「そうだけど······」 「寮に帰ったら、一緒にご飯食べて、ゆっくり過ごそう。泰介のしたいこと、全部付き合うよ。」 「え?本当?」 「本当」 俺が今誉君としたいこと······。 正直いえば、今は本当、触ってほしいから、寮に行ったらいっぱいおねだりしよう。 「何かいい事思いついた?」 「え?うん。何でわかったの?」 「匂いと、表情。すごく楽しそうだ。」 「ふふっ、正解!すごく楽しみなの」 遂に誉君が帰る時間になって、最寄り駅まで一緒に行く。 「じゃあ、明明後日に。」 「電話はするよ!」 「うん。わかってる。」 最後に抱きついて、改札で手を振る。 誉君と一緒に行きたいな。そう思いながら、誉君が見えなくなるまでそこにいた。 とぼとぼと家に帰り、部屋に残る誉君の微かな匂いに早速感じた寂しさを紛らすように、ベッドに寝転び、枕に顔を埋めた。

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