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第692話

「誉君が真緒さんのこと、すごく大切に思っているのは知っています。俺と番になったからって、その気持ちは消えることは無いし、消さないといけない訳じゃない。」 俯きながら初めにそう言った渡は、唇を噛んでから言葉を続けた。 「一途な誉君が好きです。誉君が幸せな時は俺も幸せです。なのに······誉君が寝言で真緒さんを呼んでいて、すごく幸せそうでした。俺を抱きしめながら、名前を呼んで、幸せそうに眠ってました。」 「······」 「本当なら、誉君が夢の中で真緒さんに会えたことを俺も喜びたいんです。なのに、どうしても喜べない。それどころか幸せそうに真緒って呼んでる誉君を見てすごくショックでした。」 「それの何が悪いんだ?」 話の途中で、ついつい思ったことを言ってしまった。 渡は「え······?」と言いながら、俺をちらっと見る。 「番が自分以外の誰かの名前を呼んで幸せそうにしているのを見れば、俺は腹が立つ。間違いなく嫉妬する。この感情は別におかしくないと思う。」 「で、でも、真緒さんですよ······?誉君がずっと大切にしていた人で······それなのにこんな醜い感情を持っていたりなんかしたら、誉君は嫌がると思う。それに······もしかしたら、やっぱり俺は真緒さんの代わりなのかもしれないし······。」 「それは俺にはわからないが、その感情は醜くなんかない。渡が誉を誰よりも大切に思っている証拠だ。それに誉が嫌がるなんて有り得ない。番の、ましてや運命の相手が嫉妬していると知れば、きっと嬉しい。俺はそうだから。」 渡は心が優しい。どこまでも綺麗だ。 だから、真緒を想う誉の気持ちを蔑ろにしているんじゃないかとか、自分は真緒の代わりなのかもしれないと考えてしまうのだと思う。 「まあ、これは俺の勝手な意見だ。実際誉がどう思うかは、誉に直接聞くしかない。自分の口で伝えるのが無理なら、手紙を書くなりすればいい。運命の番なんだ。どうせ切っても切れない関係なんだから、思ったことは伝えろ。」 「喧嘩に、なったりしない······?」 「別に喧嘩はしてもいいだろ。俺も千紘とは何回か喧嘩してるぞ。その度に千紘のことがわかるようになっていく。喧嘩は悪いことばかりじゃない。」 「······部屋から追い出されたら?」

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