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第694話 誉side

昨日から、泰介の様子が変だ。 厳密に言えば昨日の夜、セックスをしたあと。 眠りから起きたらもうベッドには居なかったし、先に風呂に入ってカップラーメンを食べると言って1人で食事をしていた。 朝も、ずっと行きたくないと言っていた学校に行くと言って、でも後で行くから先に行けと言うし······。 完全に避けられている気がする。 学校まであと少し。1人で登校することには慣れているけど、少し寂しい。 セックスのとき、何かしてしまったのだろうか。 おかしくなったのはあの後だ。無理をさせたのが悪かったのか?いや、でも······泰介も善がっていたと思う。 もしかして、俺が勝手にそう思っているだけなのか。俺が下手なのか。 「······ショックだ」 それもかなり。 もう二度とさせてもらえないかもしれない。そんなのは嫌だ。 どうにかして技術をあげなければいけない。 ──でも、どうやって? 「あ、高梨先輩だ。あけましておめでとうございます」 「松舞か。あけましておめでとう。」 「今何か独り言言ってませんでした?」 「いや、別に──······」 そうだ。松舞に聞けばいいんじゃないか。 抱かれる側はどうすれば気持ちいいと思えるのか。 「松舞、頼みがある。」 「え、俺に?偉成じゃなくて?」 「これはお前にしか無理だ。」 「······すごくやる気出た。何ですか?何でも頑張りますよ!」 そう言われ、状況を説明した上で、聞きたかったことを聞くと、白けた目を向けられた。 こんなに冷たい目で見られたのは初めてだ。 「馬鹿なんですか?そんなの渡君に直接聞けばいいじゃないですか。」 「誰が『俺のテクニック不足か』って聞けるんだよ」 「聞けるでしょ。無関係の俺に変なお願い出来るんだから」 「······馬鹿にしたな」 「するでしょ」 いつからか松舞は俺に対する扱いが雑になってきたように感じる。 「人によって違うんだし、そういうのは2人で解決することですよ。そもそも本当にそれが原因?それならそう何回も付き合ってくれませんよ。」 「······泰介は優しいから付き合ってくれてたのかもしれない」 「じゃあそれが本当かどうか本人に確認してください。······今日は厄日なのかな。朝から偉成はずっと文句言ってるし、高梨先輩に馬鹿みたいなお願い事されるし。」 散々に馬鹿にされて、腹が立つどころか恥ずかしくなってくる。 確かに、よく『そうだ』なんて思って松舞に変なお願いをしたなと思う。

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