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第695話
「喧嘩してないから仲直りっていうのは変だけど、早く元の2人に戻ってください。じゃないと渡君は体調崩すかもしれませんよ。番からの愛情を感じられなくなると不安になるから。」
「······俺は愛してるつもりだ」
「渡君に伝わらないと意味が無いですよ。」
校舎について、すぐに別れる。
そうだ。ちゃんと泰介と話をしないと。
教室に入り、自分の席に座る。
帰ったら話があると、泰介にメッセージを入れて、1限目の授業の準備をした。
***
授業が終わり、寮に帰る。まだ泰介は帰ってきていなくて、暗い部屋に電気を灯し部屋着に着替えてソファーに座った。
「······怒っていたら謝らないと」
怒らせるようなことをした覚えは無いけれど。
膝に肘を立て、顎を置き溜息を吐く。
「何、したっけ」
もしかすると、泰介は俺がした『何か』に対して凄く悩んでいるかもしれない。
罪悪感に苛まれて、自分が嫌になる。
「──ただいま」
泰介の声が聞こえ、顔を上げる。
「おかえり」
廊下の方を見るとそこに立ったまま、俺とは目を合わせずに「うん」と言って部屋着に着替えに行った。
······やっぱり、何かしてしまったんだな。
自覚がないのが申し訳ない。
着替えて、リビングに出てきた泰介を呼んで、「話がしたい」と伝える。
「······実は、俺も話があって······」
「今から話さないか」
「うん。」
飲み物を用意して、テーブルの席に向かい合って座る。
重たい沈黙が走り、それに耐えきれずに口を開く。
「······俺のこと、避けてるよな······?」
「っ!」
やっぱり視線は合わない。
泰介は俯いたまま、1度首を縦に振った。
「ごめん、なさい」
「······別に、謝らなくていい。何か理由があるんだろうとは思ってるから。多分俺が、何かしたんだろ。」
「······誉君。誉君は、今、幸せですか······?」
「は?」
思いもよらなかった質問に間抜けな声が出る。
「真緒さんが、隣にいない今も、幸せですか。」
「······何、言ってるんだ······?」
声が震えて、唾を飲む。
どうして、そんなことを言うんだろう。
どうして、そんな不安な匂いをさせているんだ。
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